ペットの停電対策・災害時の過ごし方(家庭+動物病院)
2025.09.19 医療・動物病院 ペットと暮らす 防災・BCP 管理人
ペットの停電対策・災害時の過ごし方(家庭+動物病院)
はじめに:“止めない”ための準備が、いちばんの安心
急な停電や災害のとき、ペットは環境の変化に敏感です。暑さ・寒さ・暗さ・音、そしてごはん・給水・医療がいつも通りに続けられるかが肝心。家庭でも動物病院でも、まずは「止めない」ための設計と手順を用意しておきましょう。
家庭:停電直後の一次対応
まず安全確認
- ブレーカー・周辺一帯の停電状況を確認
- ろうそくは倒火・火災の恐れあり。LEDライトを常備
- 冷蔵庫は極力開閉を避け、保冷材で補助
夏:体温管理を優先
- 直射と西日を遮る(カーテン・アルミシート)
- 窓2か所を数センチ開け通風、ケージ位置は風の通り道に
- 保冷剤は布でくるむ・誤食防止。冷感マットを併用
- USBファンや12Vファンはモバイル電源に接続
冬:底冷え対策から
- 床・ケージ下に断熱材やコルク、毛布で冷輻射を遮断
- 小型パネルヒーターはサーモ付きを優先(低温やけど注意)
- 乾燥が進むと体感が下がるので、水分補給をこまめに
家庭:平時にしておく準備
同行避難の正しい理解
同行避難は「安全な場所まで一緒に避難する」ことを指し、避難所で人と同室で過ごせることを保証するものではありません。自治体ごとの受入方針や必要物資は平時に確認しておきましょう。
個別防災キット(3〜7日分)
- フード・水・器具(折りたたみボウルなど)
- 常備薬・投薬スケジュール・カルテ写し
- ペットシーツ・排泄物処理用品・ビニール袋
- 首輪・迷子札・予備リード・写真(身元確認用)
- ケージ/キャリー・毛布・タオル・ウェットティッシュ
身元と健康の備え
- マイクロチップの登録・変更手続き
- 犬は鑑札・注射済票の保持、ワクチン証明の控え
- キャリー・クレートに慣らしておく(避難所で役立つ)
電源の考え方:まず“何を止めないか”を決める
家庭向けの現実解
- スマホ充電・LED照明・USBファンなどはポータブル電源で賄う
- 小動物・水槽はエアポンプやヒーターの消費電力と必要時間を把握し、事前に試してみて(何時間動くか)
- 医療機器に準ずる機器を使う場合は常時インバータ方式UPSなど無瞬停の機器を選ぶ
病院・施設では“無瞬停”が前提
酸素濃縮器、麻酔器、ICU保温、サーバ/電子カルテ、ネットワーク機器など、瞬停が許されない機器は機器仕様に合わせてUPS(無停電電源装置)×CVCF(定電圧・定周波数電源)で対応するのが基本です。ラインインタラクティブUPSは切替遅延があるため、用途を選びます。
動物病院・施設:BCPの骨子
優先順位を決める
- ペットの安全(ICU・酸素・保温・麻酔関連)
- 診療の継続可否(最低限の処置・入院継続)
- 記録・データの保全(電子カルテ/サーバ)
- スタッフ・来院者の安全、建物・設備の点検
電源:可搬型大容量UPS×CVCFを中核に
停電時でも無瞬停・安定化で運転を継続することが最重要です。可搬型大容量UPS×CVCF「パーソナルエナジー・ポータブル」を中核に、機器仕様に合わせて対応します。分岐はシンプルに、延長・たこ足での過負荷は避け、定期的に実負荷で試してみてください。
通信の冗長化
- 固定回線+モバイル/衛星の二系統(自動フェイルオーバー)
- 停電時もルータ・AP・PoE監視カメラを無瞬停で動かす
運用手順と訓練
- 停電時の担当・手順書(電源投入順、酸素・ICUの優先順位)
- 入院動物の移送計画、飼い主連絡テンプレ
- 月1回の短時間訓練と、年1回の総合訓練
小動物・水槽:停電時のポイント
エア・循環・温度の3要素
- 空気:手動ポンプ・電池式ポンプで最低限の酸素を確保
- 循環:振動が少ないUSBポンプをモバイル電源で駆動
- 温度:断熱カバーで放熱/放冷を抑え、必要なときのみ加温
平時の実験が命綱
「この電源で何時間もつか?」は平時に実機で試してみてください。必要時間に対し30%程度の余裕を見ておくと安心です。
費用対効果の考え方(迷ったら“順序”で)
効く順序の一例
- ① 現状把握(機器リスト・消費電力・必要時間)
- ② 停電時の優先順位と手順書化
- ③ 家庭は小型電源+通風・断熱などの低コスト手段
- ④ 病院は機器仕様に合わせて可搬型大容量UPS×CVCFで対応(無瞬停)
- ⑤ 通信二重化や在庫・物流(酸素ボンベなど)の見直し
まとめ:平常運転を守るために
停電や災害は、いつか必ず来ます。だからこそ、家庭では安全・通風/断熱・小型電源の重ね合わせで体感を守り、病院・施設では可搬型大容量UPS×CVCFで「止めない」を前提に設計。手順書と訓練で、当日の不安を小さくしておきましょう。
※本記事は一般的な情報であり、機器の選定・設置・運用は各機器の仕様と専門家の指導に従ってください。