「ビルの電気」を待つのは、もうやめました。テナント型クリニックが選んだ、患者様を守る新しい備え
2025.12.18 医療・福祉・公共 管理人

Re 2025 執筆:株式会社 Re編集部 | 読了目安:約4分
「このビルには大きな非常用発電機があるから、停電しても大丈夫だと思っていたんです」
あるクリニックの院長先生が、打ち合わせの際、ぽつりとこぼされました。
テナントビルで開業されている先生方の多くが、同じように感じていらっしゃるかもしれません。立派なビルであればあるほど、「設備のプロが管理してくれているはず」という安心感があります。
しかし、実はそこに「テナント型クリニックならではの落とし穴」があることを、ご存知でしょうか。
本日は、名古屋市のセタクリニック様の実例をもとに、建物の制約が多いテナント型クリニックが、どのようにして「患者様を守るための電気」を確保したのかをご紹介します。
1. 「ビルの電気」は、本当に診察室まで届くのか?
災害時、ビルの非常用発電機が動いたとします。しかし、その電気はどこへ送られるのでしょうか。
多くの場合、優先されるのは「共用部」です。エレベーター、廊下の照明、給水ポンプ、スプリンクラーなどです。個別のテナント(診察室)のコンセントまで電気が供給される契約になっていないケースは、意外と多いものです。
精密機器には「質」の良い電気が必要
もし仮に、診察室まで電気が来たとしても、もう一つ心配な点があります。それは「電気の質」です。
大型の発電機が動くとき、電圧や周波数が不安定になることがあります。照明や空調なら問題ありませんが、デリケートな電子カルテのサーバーや検査機器、精密な医療機器にとっては、その「小さな揺れ」が故障の原因になることがあります。
「せっかく電気が来たのに、怖くて高額な医療機器の電源を入れられない」
そんなジレンマを抱えないために、セタクリニック様はある決断をされました。
2. セタクリニック様が選んだ「動かせる安心」
セタクリニック様が導入されたのは、発電機でも、大掛かりな蓄電設備でもありませんでした。
「キャスター付きで、どこへでも移動できる蓄電池(パーソナルエナジー・ポータブル)」です。
なぜ、この選択だったのでしょうか?そこには、テナント型クリニックならではの切実な理由と、経営的なメリットがありました。
「工事ができない」という壁を越える
テナント型クリニックの場合、壁に穴を開けたり、分電盤を交換したりする大掛かりな電気工事は、ビルオーナー様の許可が必要だったり、退去時の原状回復費用が高額になったりと、ハードルが高いのが現実です。
しかし、キャスター付きの蓄電池なら、「置いて、コンセントに挿すだけ」です。
工事は一切不要。まるで大型の空気清浄機を導入するような感覚で、病院レベルのバックアップ電源を確保できました。
「資産」として持ち運べる
もう一つの決め手は、将来もしクリニックが移転することになっても、「そのまま持って行ける」ことでした。
建物に固定する設備への投資は、移転すれば「置いていく」ことになりますが、移動できる蓄電池なら、どこへ行ってもクリニックの資産として使い続けられます。これは経営的な視点でも、無駄のない投資と言えます。
3. スタッフと患者様のための「止まらない環境」
導入後、院内の景色はどう変わったでしょうか。
この蓄電池は、普段は商用電源(コンセント)と医療機器の間に挟んでおくだけです。万が一停電が起きても、「瞬断(一瞬の停電)」すら起こさず、自動でバッテリー給電に切り替わります。
- 診察中の電子カルテが落ちない。
- 予約システムや電話が繋がり続ける。
- 検査データの消失を防げる。
スタッフの方は、停電が起きても慌てて機器を再起動する必要がありません。「あ、停電したね」と冷静に業務を続けられるのです。
何より、「うちは災害時でも、連絡がつくしカルテも見れる」という事実は、通院される患者様にとって大きな安心感につながります。
「ウチのビルの発電機はどうなっている?」「ウチの医療機器は守れる?」
そんな疑問をお持ちでしたら、まずは現状のコンセント周りの診断から始めてみませんか?
大掛かりな工事をせずとも、今の環境のまま導入できる対策があります。
まずは現状の診断から始めてみませんか?まとめ:建物に頼らない、自律したクリニックへ
「テナント型クリニックだから、できることに限界がある」
そう諦める必要はありません。むしろ、建物の制約に縛られない「移動できる電源」を持つことは、変化の激しい時代のクリニック経営において、身軽で強靭な備えとなります。
大切な医療機器とデータを守り、患者様への責任を果たし続けるために。セタクリニック様のような「工事のいらない選択肢」があることを、ぜひ知っていただければ幸いです。
URL: https://www.ieee802.co.jp/ppower-bbank/
