災害時にスマホがつながらない理由-私たち個人ができる通信対策

2025.06.29 スマホ ブログ 管理人

大災害が発生した際、私たちの生活に不可欠なスマートフォン(スマホ)が「つながらない」という状況に陥ることは、しばしば経験されることです。安否確認、情報収集、そして救助要請に至るまで、あらゆる面でスマホに依存している現代社会において、この通信途絶は極めて深刻な問題を引き起こします。本稿では、災害時にスマホがつながらなくなる主な理由を詳細に解説するとともに、私たち個人ができる通信対策について、具体的な方法を交えながら深く掘り下げていきます。

 災害時にスマホがつながらない理由

災害時にスマホがつながらなくなる理由は多岐にわたりますが、主に以下の要因が複合的に作用することで発生します。

 1.通信設備の物理的損壊

最も直接的かつ広範囲に影響を及ぼすのが、基地局、交換機、光ファイバーケーブルなどの通信設備の物理的損壊です。地震による倒壊、津波による浸水、土砂崩れによる埋没、火災による焼失など、自然災害の猛威は通信インフラを容赦なく破壊します。

 * 基地局の損壊: 携帯電話の電波を送受信する基地局は、アンテナや制御装置などを備えています。これらが地震の揺れで倒壊したり、津波で流されたり、火災で焼失したりすると、そのエリアの通信は完全に途絶します。特に、大規模な地震では広範囲の基地局が同時に被害を受ける可能性があり、通信網全体が麻痺する事態に発展します。

 * 伝送路の寸断: 基地局と基地局、あるいは基地局と通信網の中心を結ぶ光ファイバーケーブルなどの伝送路が、地滑りや道路の陥没、橋の損落などによって寸断されると、たとえ基地局が無事でも通信は不可能になります。地下に埋設されているケーブルであっても、液状化現象や地盤沈下によって損傷を受けることがあります。

 * 電源喪失: 通信設備は電気で稼働しているため、大規模停電が発生すると、非常用電源が尽きた基地局から順に機能停止していきます。非常用電源は通常、数時間から数十時間程度の稼働を想定していますが、停電が長期化すれば、最終的にはほとんどの基地局が停止状態に陥ります。燃料の供給が途絶えることも、非常用電源の継続的な稼働を困難にします。

 2.通信集中による輻輳(ふくそう)

災害発生直後、多くの人々が一斉に安否確認や情報収集のためにスマホを使用しようとすることで、ネットワークに許容量を超えるアクセスが集中し、「輻輳」と呼ばれる状態が発生します。これは、道路の交通渋滞に似た現象で、回線が混み合いすぎて通信が繋がりにくくなったり、全く繋がらなくなったりします。

 * 音声通話の集中: 災害時は家族や友人の安否を直接確認したいという心理から、音声通話が爆発的に増加します。音声通話はデータ通信に比べて回線を占有する時間が長く、多数の同時通話が発生するとネットワークへの負荷が極めて大きくなります。

 * データ通信の増加: SNSでの情報発信・収集、ニュースサイトへのアクセス、安否情報登録サービス利用など、データ通信の需要も急増します。特に、動画や画像など容量の大きなコンテンツの送受信は、ネットワーク帯域を大きく消費します。

 * 基地局の処理能力の限界: 1つの基地局が同時に処理できる通信量には限りがあります。平常時であれば問題なくても、災害時のように短時間に大量のアクセスが集中すると、基地局の処理能力を超過し、通信規制が行われたり、エラーが発生したりします。

 3.災害用伝言板・伝言ダイヤルの制限

通信キャリアは災害時、輻輳を回避し、緊急性の高い通信(消防、警察、医療機関など)を優先するために、一般の通信に制限をかけることがあります。その一環として、「災害用伝言板(web171)」や「災害用音声お届けサービス」などの災害時専用サービスへの誘導が行われます。これらは輻輳対策として有効ですが、同時に一般の音声通話やデータ通信が制限される理由にもなります。

 * 音声通話の規制: 緊急車両の出動や救助活動における通信を確保するため、一般の音声通話が一時的に繋がりにくくなる、あるいは規制されることがあります。これは、命に関わる緊急通信を最優先するための措置です。

 * データ通信の帯域制限: 特定のウェブサイトやサービスへのアクセスが制限されたり、通信速度が意図的に低下させられたりすることがあります。これにより、ネットワーク全体の負荷を軽減し、より多くのユーザーが最低限の情報をやり取りできるようにします。

 4.スマートフォン自体の損傷・バッテリー切れ

たとえ通信インフラが無事であっても、私たち自身のスマホが災害の影響を受けることもあります。

 * 水濡れ・物理的破損: 津波や浸水、土砂崩れなどでスマホが水濡れしたり、落下や衝撃で破損したりすると、当然ながら使用できなくなります。

 * バッテリー切れ: 停電が長期化すると、充電が不可能になり、スマホのバッテリーが尽きてしまいます。モバイルバッテリーを用意していても、容量には限りがあり、長期間の停電には対応しきれない可能性があります。

私たちにできる通信対策

災害時にスマホがつながらない状況に備え、私たち個人ができる通信対策は多岐にわたります。事前の準備と、災害発生時の冷静な行動が、円滑な情報収集と安否確認に繋がります。

 1.事前の備え

災害発生時にパニックにならず、冷静に対応するためには、事前の準備が不可欠です。

 * 家族間での連絡方法の確認と共有:

   * 災害用伝言板(web171)/災害用音声お届けサービスの利用方法を家族全員で確認し、実際に試しておくことが重要です。登録方法、メッセージの閲覧・再生方法を習得し、いざという時に迷わず使えるようにしましょう。

   * 集合場所・安否確認のルール: 災害発生時、家族がバラバラの場所にいる可能性を考慮し、予め集合場所を決めておく、あるいは安否確認の定点連絡時刻を設定しておくなど、具体的なルールを決めて共有しておきましょう。

   * アナログな連絡手段の確保: 緊急連絡先を記したメモ帳や、公衆電話の場所を記した地図など、スマホに頼らないアナログな連絡手段も用意しておくと安心です。

 * バッテリー対策:

   * モバイルバッテリーの常備: 大容量のモバイルバッテリーを複数用意し、常に満充電にしておくことが必須です。Ankerなどの信頼できるメーカー製で、複数回充電できる容量(例:10000mAh以上)のものがおすすめです。

   * ソーラー充電器・手回し充電器の検討: 停電が長期化した場合に備え、ソーラー充電器や手回し充電器の導入も検討しましょう。これらは緊急時の貴重な電源となります。

   * 車載充電器の活用: 車をお持ちの場合は、シガーソケットから充電できる車載充電器も有効です。車のガソリンが尽きるまではスマホの充電が可能です。

   * 節電設定の確認: スマホの省電力モードや節電設定(画面輝度を下げる、不要なアプリを閉じる、Wi-Fi/Bluetoothをオフにするなど)を普段から確認し、災害時にすぐに適用できるようにしておきましょう。

 * 情報収集手段の多角化:

   * ラジオの準備: 電池式の携帯ラジオは、停電時でも情報を得るための非常に有効な手段です。乾電池も多めに備蓄しておきましょう。AM/FM放送だけでなく、ワイドFM対応のラジオであれば、より多くの情報を得られる可能性があります。

   * テレビ(ポータブルテレビ): ポータブルテレビも、バッテリーで動作するものであれば災害時の情報源となります。

   * 防災行政無線: 自治体が発信する防災行政無線は、地域住民への重要な情報伝達手段です。自宅や避難場所の近くに設置されているか確認しておきましょう。

   * 公衆Wi-Fiの確認: 災害時に解放される無料の公衆Wi-Fiスポット(00000JAPANなど)の存在や、利用方法を事前に確認しておくと、万が一の際に役立ちます。

 * SIMフリースマホ・デュアルSIMの検討:

   * 異なるキャリアのSIMカードを挿入できるSIMフリースマホや、デュアルSIM対応スマホを検討することで、一方のキャリアの通信網がダウンしても、もう一方のキャリアの通信網が生きていれば通信できる可能性が高まります。災害時のリスク分散として有効です。

 * オフラインで利用できるアプリの準備:

   * オフラインマップ: 地図アプリの中には、事前に地図データをダウンロードしておくことで、通信環境がない場所でも地図を確認できるものがあります。災害時の避難経路確認や現在地把握に役立ちます。

   * 懐中電灯アプリ: スマートフォンに内蔵されている懐中電灯機能は、停電時に非常に役立ちます。

   * 応急処置マニュアルアプリ: インターネットに接続できない状況でも、応急処置の方法を確認できるアプリをダウンロードしておくと安心です。

 2.災害発生時の行動

実際に災害が発生した際には、冷静かつ適切な行動が求められます。

 * むやみに電話をかけない:

   * 災害発生直後は、安否確認などで電話回線が輻輳しやすい状況です。本当に必要な緊急連絡以外は、音声通話を控えるようにしましょう。

   * 災害用伝言板・SNSを活用する: 安否確認は、災害用伝言板(web171)や、LINE、X(旧Twitter)、FacebookなどのSNSを活用しましょう。これらは音声通話に比べてネットワーク負荷が少なく、情報を効率的に伝えることができます。

     * LINE: 既読機能があるため、相手がメッセージを読んだかどうかがわかります。グループチャット機能も活用しましょう。

     * X(旧Twitter): リアルタイムの情報収集に優れています。「#災害」「#安否確認」などのハッシュタグを活用し、情報を発信・収集できます。

     * Facebook: 安否確認機能があり、自分が安全であることを発信したり、友人の安否を確認したりできます。

   * テキストメッセージ(SMS)の利用: SMSは比較的ネットワーク負荷が小さく、音声通話が繋がりにくい場合でも送受信できることがあります。

 * 公衆電話の活用:

   * 災害時には、通信キャリアやNTTが公衆電話を無料で開放する場合があります。スマホがつながらない場合でも、公衆電話から連絡が取れる可能性があります。設置場所を事前に確認しておきましょう。

 * Wi-Fiスポットの活用:

   * 「00000JAPAN」などの無料公衆Wi-Fiサービスが開放された場合は、積極的に利用して情報収集や安否確認を行いましょう。ただし、セキュリティには十分注意し、個人情報のやり取りは避けるべきです。

 * 通信の節約:

   * スマートフォンのバッテリーを温存するため、不要なアプリは終了し、画面の明るさを最低限に設定するなど、節電を心がけましょう。

   * オフラインでできることはオフラインで行い、通信は本当に必要な場合に限定しましょう。

 * 地方自治体・防災機関の情報に注目:

   * 避難所の開設状況、物資の配布状況、被害情報など、地方自治体や防災機関が発信する情報に注意を払いましょう。これらはラジオ、防災行政無線、あるいは広報車など、様々な手段で提供されます。

 * デマに惑わされない:

   * 災害時は不確かな情報やデマが拡散されやすくなります。情報源を必ず確認し、信頼できる機関(気象庁、自治体、報道機関など)からの情報のみを信じるようにしましょう。

災害に強い通信技術の進化と課題

通信キャリアも、災害に強い通信インフラの構築に向けて様々な取り組みを進めています。

 * 耐震・耐水・耐火設計の強化: 基地局や交換機などの通信設備は、地震や津波、火災などの自然災害に耐えうるように設計が強化されています。

 * 非常用電源の多重化・長時間化: 停電に備え、バッテリーや自家発電機による非常用電源の設置が進められており、稼働時間も延長されています。

 * 衛星通信の活用: 陸上の通信網が寸断されても、衛星通信であれば通信が可能です。災害時、衛星回線を利用した移動基地局車などが展開されることがあります。

 * 可搬型基地局の配備: 災害によって基地局が損壊した場合でも、迅速に可搬型基地局を現地に展開し、一時的に通信エリアを復旧させる取り組みが進んでいます。

 * メッシュネットワーク: 複数の通信機器が相互に連携し、網の目状に通信経路を形成するメッシュネットワークは、一部の機器がダウンしても他の経路で通信を継続できるため、災害に強い通信システムとして期待されています。ただし、まだ一般化には至っていません。

 * Starlinkなどの低軌道衛星通信: 最近注目されているStarlinkのような低軌道衛星通信サービスは、災害時に地上の通信網が機能しなくても、直接衛星と通信できる可能性を秘めています。これは、従来の衛星通信に比べて低遅延で高速な通信が可能となる点で、災害時におけるゲームチェンジャーとなる可能性があります。しかし、現状では導入コストや機器の携帯性などの課題も存在します。

これらの技術進歩は頼もしいものですが、完全に通信途絶を防ぐことは困難であり、私たち一人ひとりの備えが依然として重要であることに変わりはありません。

 まとめ

災害時にスマートフォンがつながらなくなる理由は、通信設備の物理的損壊、通信集中による輻輳、通信規制、そしてスマホ自体の損傷やバッテリー切れなど多岐にわたります。これらを理解し、適切な対策を講じることで、私たちは災害時の情報収集や安否確認の手段を確保し、命を守る行動に繋げることができます。

事前の備えとしては、家族間での連絡方法の共有、モバイルバッテリーや非常用電源の準備、ラジオなどの複数情報源の確保、オフラインで利用できるアプリの準備などが挙げられます。そして、災害発生時には、むやみに電話をかけず、災害用伝言板やSNS、公衆電話などの代替手段を積極的に活用し、通信の節約を心がけることが重要です。

通信技術の進化は目覚ましいものがありますが、災害に対する完全な安全保障はありません。私たちは常に「通信がつながらない可能性」を念頭に置き、最悪のシナリオを想定した備えと、冷静な行動を心がけることで、困難な状況を乗り越える力を得ることができます。災害はいつどこで起こるかわかりません。今日からできる対策を一つずつ実行していくことが、私たち自身と大切な人の命を守る第一歩となるでしょう。

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