ゴルフ場の停電対策|“予定通り”を守る電源設計
2025.09.25 非常電源・UPS 防災・BCP 管理人
ゴルフ場の停電対策|“予定通り”を守る電源設計
せっかくの記念ラウンド。スタートも昼食もお風呂も、最後の会計まで気持ちよく終えて笑顔で帰っていただく——私たちが守りたいのは、この「予定通り」の体験です。
台風・落雷・瞬停・系統の電圧変動は、フロントの予約・決済、マスター室のスタート管制、厨房や温浴の製造・循環、そして練習場やゲートの制御・安全に影響します。本稿では、可搬型大容量UPS『パーソナルエナジー・ポータブル』(以下、PEP)を中核に、必要に応じた発電機・通信冗長を組み合わせ、“止めない運営”を現実にする設計を、現場運用の目線で解説します。PEPはCVCF(定電圧・定周波数)による常時給電・電圧安定を備え、瞬断と電源品質悪化の双方をカバーします。
なぜゴルフ場は“瞬停”に弱いのか(体験価値と安全の両面)
ゴルフ場の運営は、予約システム・POS・Wi-Fi・無線連絡・館内放送・ゲート・練習場ボール機・カート管制・給湯や循環ポンプなど多数の電気設備に依存しています。数ミリ秒の瞬断でも制御盤が再起動し、チェックインやスタート進行が止まり、安全配慮や売上の取りこぼしが発生します。復帰に手間がかかる設備ほど現場オペレーションへのダメージは大きく、ピーク時ほど致命的です。
止まりやすい重要ポイント
- フロント:予約・受付・決済(POS/レジ/プリンタ/ルータ/ONU)
- マスター室:スタート管理・管制、無線機充電・基地局、館内放送
- レストラン/売店:冷蔵・冷凍・食洗・券売・クレカ端末
- 温浴:循環ポンプ・制御盤・加温・給湯
- 練習場:ボールディスペンサー・自販機・照明
- 場内:ゲート・監視・非常放送・セキュリティ
“クラウドは強い。ただし最後の数メートル”
「クラウドだから大丈夫」は半分正解です。データセンター側の冗長化は強固ですが、館内の電源・回線・ルータ/Wi-Fi・端末が止まると、データは無事でも運営は止まるが現実に起きます。だからこそ、PEP(CVCF常時給電)で通信系を常時保護し、固定回線の代替としてStarlink/LTEを用意し、POS等のオフライン運用→復旧後の再同期手順まで整えることが重要です。
設計の型:PEP+発電機で“頼りになる電源”を
1)常時:PEPのCVCFで瞬断ゼロ・電圧安定
ONU→ルータ→L3/PoE→無線AP→POS/タブレットなど通信系一式は、PEP配下に常設。これで瞬断・電圧降下・突入電流に伴うハングや再起動を回避します。スタート室・管制・放送・ゲート等の制御も、重要度の高い回路から順にPEPの常時給電へ。
2)非常時:PEPの“可搬”性でピンポイント給電
停電時はPEPをフロント・マスター室・練習場制御盤などに即時接続。長いコードで引き回すのではなく、必要地点へ機器を移動できるのが可搬の強みです。イベントやコンペ時の臨時冗長にも活躍します。
3)長時間:発電機は“スタミナ”、PEPは“橋渡しと品質”
発電機は長丁場の要ですが、起動→負荷切替の瞬間に瞬停が生まれます。ここをPEP内蔵CVCFがブリッジし、制御盤のリセットを防止。「発電機=スタミナ」「PEP=品質と橋渡し」の役割分担がポイントです。
4)通信冗長:固定回線+Starlink/LTE
固定回線断でも予約・決済・連絡を止めないため、ルータでフェイルオーバー設定を推奨。通信が生きていれば接客は続けられる——この安心感はスタッフの判断スピードにも直結します。
RTO(どれだけ早く再開するか):「フロント/マスター室は5–10分以内」など時間目標を明文化。
RPO(どこまでのデータを失わないか):「取引データ欠損ゼロ」を目標に、オフライン受付→復旧後の自動再送を設計。
費用対効果の考え方
「止めない」ことは、売上の積み上げ、返金やクレーム対応工数の削減、そして評判維持に直結します。以下の簡易式で、概算の費用対効果を見えやすくします。
失う価値の推定:
(影響ラウンド数×平均客単価×同伴人数)+(レストラン食数損失)+(クレーム/返金・代替対応工数)+(再来店・会員継続への影響)
投資の回収感:
可搬型大容量UPS『パーソナルエナジー・ポータブル』と通信冗長の初期費用 ÷ 年間で回避できる上記損失=回収年数の目安
※費用対効果は、現場の規模や稼働率により異なります。個別試算をご提案します。
自己診断チェックリスト|“今日の18H”を回せるか?
- [ ]フロント/マスター室/通信一式はPEP(CVCF常時給電)下にある
- [ ]固定回線がダウンしても自動でStarlink/LTEへ切替できる
- [ ]POS/予約のオフライン受付→復旧後再同期の手順が文書化されている
- [ ]発電機の起動手順と切替テストを年1回以上実施している
- [ ]練習場・ゲート・温浴など復帰に時間のかかる制御盤が把握できている
- [ ]RTO/RPO目標(再開時間・データ欠損許容)が決められている
- [ ]雷注意報時の当日オペレーション表が配布され訓練済み
導入ステップと当日運用フロー
導入ステップ
- 現地下見:重要負荷の洗い出し(一次/二次側での系統分離)
- 実負荷計測:瞬間最大・平均・起動電流の把握
- 機器選定:PEP容量、台数、通信冗長・ルータ設定
- 配線/盤整備:常時系と非常系の切替の明確化
- 試験運転:停電模擬、オフライン受付→再同期の訓練
当日運用フロー(例)
- 雷注意報発令:通信・管制・フロントのPEP準備、データ同期を完了
- 瞬停/停電発生:通信一式はPEPで継続、重要端末へ可搬スポット給電
- 見守りPCにメールで通知:異常検知/稼働状況を見守りPCへメール通知し、所定の対応を起動
- 長時間化:発電機起動→PEPのブリッジで瞬停を発生させず、不要負荷を落として運営継続
- 復旧後:POS等の再同期、ログ確認、改善点の共有
導入事例|鷹の巣ゴルフクラブ(広島県)

背景と課題
突発的な長時間停電でフロントに待機列が発生し、PCやネットワーク機器が使えず、チェックアウトに必要な精算業務が滞る事態が発生。台風・雷・豪雨など自然災害が想定外の頻度で起こる中、“無瞬停で業務を継続”できる仕組みが求められていました。
採用のポイント
- 常時給電・電圧安定:PEPで通信/管制/フロントを常時保護
- 可搬冗長:必要地点へスポット給電、イベント時の臨時冗長にも対応
- 見守りPCにメールで通知:停電・異常時の情報を見守りPCに通知し、運営判断を迅速化
- 安全性と機動性:人や物の動線に配慮しつつ、屋内外で迅速に展開可能
効果
- 停電時でも無瞬停で長時間対応が可能:連続した業務継続と顧客体験の維持に貢献
- 見守りPCにメールで通知:異常の早期把握で対応が標準化・迅速化
- 移動の容易さと安全性の高さ:屋内外の複数拠点へ柔軟に対応
※写真・記載内容は掲載許可範囲に基づく一般化した説明です。詳細は個別にお問い合わせください。
製品ページ
可搬型大容量UPS『パーソナルエナジー・ポータブル』の詳細・活用例は下記よりご覧ください。
参考・出典
石坂ゴルフ倶楽部「5月8日(水)停電による臨時休場について」
停電によりゴルフ場が休場に至った実例として参照。記事本文の一般論の補足参考リンクです。
ご相談・お問合せ(CTA)
「まずは現状の設備でどこまで“止めない”を実現できるか?」——現地下見から重要負荷の洗い出し、費用対効果の試算、訓練計画まで並走します。お気軽にご相談ください。
よくある質問(FAQ)
Q. クラウドなら停電でもデータは安全ですか?
A. 基本的にクラウド側のデータは保全されます。ただし館内の電源・回線・端末が止まると運営は止まります。通信系はPEP(CVCF常時給電)で保護し、回線冗長とPOS/予約のオフライン運用→再同期をセットで設計します。
Q. どの設備から優先的にPEP常時給電にすべき?
A. 通信一式(ONU/ルータ/L3/PoE/AP)とフロント・マスター室、復帰に時間のかかる制御盤から優先します。
Q. どれくらいの給電時間を見込めばよい?
A. 通信一式は60–120分を推奨。PEPを併用すれば重要端末は半日以上の運用も可能です。長時間は発電機と役割分担します。
Q. 見守りPCにメールで通知は何を送る?
A. 停電・電圧変動・機器停止などのイベント、PEP残量・切替状況、復旧後の再同期完了など、運営判断に必要な情報を見守りPCへメール通知します。
Q. Starlink/LTEを入れるメリットは?
A. 固定回線断でも予約・決済・管制の要を維持できます。電源が生きていれば“予定通り”が守れる点が最大の価値です。