停電・断線でも”通信”を止めないクリニックのつくり方

2025.10.01 衛星通信 医療DX 停電対策 管理人

停電・断線でも通信を止めないクリニックのつくり方|Starlinkアンテナと可搬型大容量UPS『パーソナルエナジー・ポータブル』の写真。

停電・断線でも通信を止めないクリニックのつくり方

受付でオンライン資格確認が回らない。電子カルテに入れない。決済や印刷が詰まり、患者さんの列がじわりと伸びていく。機器は壊れていないのに、つながらないだけで業務全体が鈍くなる——そんな瞬間を、一度は経験された方も多いはずです。

いま、医療の多くはクラウドに支えられています。これは「保存先」としてはとても堅牢です。ただし診療を継続できるかは、クラウドに「つながる経路」を現場で守れるかにかかっています。この記事では、クリニックに特化して「まず第一に通信を止めない」ための考え方と運用方法をまとめました。配線や型番の細部には触れませんが、現場でそのまま役立つ“1枚の構成ガイド”はご希望の方へお送りいたします(非公開でお届け)。

【さっと読める1枚】“通信を止めない”構成ガイドを進呈

こちらの記事は考え方まで。実務のポイントは、現場で役立つ構成ガイドにまとめてお届けします。

“フルクラウドだから大丈夫”ではない——保存先とつながり方は別物

クラウドはデータの保存先として安全性を高めます。しかし診療の継続はつながるかの信頼性に左右されます。次のどれか一つでも起きれば、フルクラウドであっても受付は止まります。

  • 電源瞬断:ONU/ルータ/PoEスイッチ/APが一瞬で落ち、再起動・再認証に時間を要する。
  • 回線障害:局舎・幹線・地域の断。SaaSは無事でも“届かない”
  • IdP/DNS/MFAの不調:ログインやネーム解決の不具合で主要システムに入れない。
  • 院内Wi-Fi/LANの局所障害:干渉・PoE不調・配線断で端末が孤立。
  • 印刷・決済などローカル周辺機器の停止:ラベルやレシート、会計が詰まる。
  • 音声のIP化:クラウドPBX/ひかり電話も回線依存で、障害時は受発信が困難。
  • 災害時の輻輳:速度低下は「遅い=実質止まる」に等しい。

だからこそ、電源(無瞬停)通信(二重化)を分けて整え、さらに運用(定期テスト)で“使えるBCP”に育てることが要点になります。

まずは“受付を止めない”。ここが回れば診療は継続できる

非常時にすべてを動かす必要はありません。最優先は、受付・資格確認・会計という患者様体験の入口です。ここが回れば、縮小しながらでも診療は継続できます。非常時は来客用Wi-Fiを停止し、医療DXだけを残すなど、運用の優先順位をあらかじめ定めておくと現場が迷いません。

電源の核となるのが可搬型大容量UPS×CVCFです。常時インバータ給電で電源品質を揃え、瞬断をゼロに近づけることでネットワーク機器の誤動作・再起動を防ぎます。装置の考え方は可搬型大容量UPS『パーソナルエナジー・ポータブル』をご覧ください。

現実解は“二段ロジック”——電源は無瞬停、通信は自動切替

電源:UPS×CVCFで“無瞬停”に(ONU/ルータ/PoE/APを集約給電)

ルータやAPが瞬断で落ちると、再起動・再認証に数分のロスが発生します。これを消すのは無瞬停だけ。常時インバータ方式のUPS×CVCFでネットワーク心臓部を集約給電し、負荷と継続時間に合わせて適正容量を選定します。

通信:デュアルWAN+自動フェイルオーバー(主回線優先)

主回線(光など)と、異系統バックアップ(例:Starlink)を組み合わせ、主回線が不健全になれば数秒で自動切替、復旧すれば自動で主回線へ戻す構成が基本です。切替所要秒は機器設定やヘルスチェック間隔に依存するため、テストを通じて“ほどよい敏感さ”を調整します。

運用:月次の切替テストで“机上の設計”を“現場の武器”に

使えるBCPの分岐点は運用です。毎月、主回線を意図的に遮断→自動切替→復帰を確認し、所要秒と業務影響を記録。通知メールで共有し、改善点を積み上げます。

今回の記事は考え方まで。実務は“1枚のガイド”でスムーズに

デュアルWANの考え方/無瞬停の要点/優先負荷の決め方 etc.をまとめたガイドをお送りします。まずは資料、次にお話を。

最小200W前後で“受付は止めない”。容量はこう決める

入口W数の目安

小規模クリニックで「受付・会計・資格確認を継続」する最小構成は概ね200W前後が目安です(Starlink 60–100W/ルータ・AP 30–40W/PC+モニタ 約120W)。世代や台数で上下するため、現場実測を推奨します。

容量の計算式

必要Wh = 目標時間[h] × 平均負荷W ÷ 0.85(AC効率)
例)平均210Wを4時間 ⇒ 210×4÷0.85 ≒ 約990Wh。6時間 ⇒ 約1,485Wh。安全余裕を加えて選定します。

優先負荷の決め方

非常時は受付>カルテ閲覧>印刷・決済>一般Wi-Fiの順でON/OFFを事前定義。来客用Wi-Fiは停止、医療DXだけを残すなど、明文化しておけば当日の意思決定が速くなります。

選びやすい3パターン:段階的に強くする

A:通信確保キット(最小)

Starlink+デュアルWANルータ+AP+UPS×CVCF。焦点は受付を止めないこと。電力は200W級から。

B:診療継続キット

Aに電子カルテPC/モニタ1–2席を追加。縮小診療の継続を狙う現実解。印刷は必要時だけ通電。

C:強靭化キット

Bに増設バッテリー/小型発電機/太陽光充電を組み合わせ、長期戦に備えます。上記は平時にバックヤード電源としても活用可能。

Starlink導入時の現地確認や運用の注意点は、関連記事で触れています:スターリンク導入サポート

“使えるBCP”にする運用テンプレ(抜粋)

月次フェイルオーバーテスト

  • 主回線断→自動切替の所要秒を計測・記録
  • Starlink単独で主要SaaSのログイン〜会計まで動作確認
  • 主回線復旧→自動復帰の確認、ログの保存、改善点の洗い出し
  • 見守りPCにメールで通知(標準化)し、ナレッジを共有

停電時の運用

  • 優先負荷のみをUPSへ接続(来客用Wi-Fiは停止)
  • 残容量と目標時間を照合、印刷・決済はバッチ処理に切替
  • 復旧後は整流手順に従い、通常運用へスムーズに戻す

費用対効果で判断する:目に見えにくい損失も可視化

評価の軸

「受付停止30分」の影響は、待ち時間の増大、再来院対応、返金、評判低下、スタッフ残業など、見えにくい損失が積み重なります。通信と電源の二段ロジックへの投資は、停電・回線障害の頻度、診療時間帯、患者数、単価を前提に、費用対効果で定量評価するのが妥当です。弊社は負荷実測×シナリオ評価過不足のない容量設計をご提案します。

実被害データで考える:「停電=通信断の引き金」という事実

大規模災害では、通信そのものが広域で止まることがあります。
例えば能登半島地震では、携帯各社の最大支障エリアが一時的に4〜7割に達し、避難所では衛星インターネット(Starlink)機器が多数配備されました。
風災でも通信は落ちます。令和元年の千葉・台風15号では長期停電が通信障害を生んだことが公的検証で明記されています。
2025年の静岡・牧之原の突風(竜巻)でも広域の被害・停電が報告されました。
つまり、電源が落ちれば通信は最短経路で止まる。電源(無瞬停)と通信(二重化)を同時に整えるのは、統計的にも合理的な対策です。

よくあるご質問

フルクラウドなら大丈夫では?

保存先は安全でも、現場から繋がらなければ止まります。電源と通信の二段ロジックが必要です。

Starlinkは天候で不安定?

設置位置と運用(自動フェイルオーバー)の設計で、実務上のリスクを最小化できます。主回線優先の設定と月次テストで“切替の所要秒”を把握しておきましょう。

セキュリティは?

医療DXはVLAN分離/VPN/アクセス制御を前提に。来客用と混在させない設計が基本です。

医療機器の給電は?

機器仕様に合わせて可搬型大容量UPS×CVCF『パーソナルエナジー・ポータブル』で対応します(個別相談)。

関連リンク(社内コンテンツ)

外部リンク(参考/出典)

※外部リンクは公的機関等の一次・準一次情報を中心に掲載しています。各リンク先の最新発表をご確認ください。

まずは“1枚のガイド”から。現場で試せるところまで伴走します

この記事では配線や設定の細部は触れていません。ご希望の方へ、現場でそのまま役立つ“1枚の構成ガイド”(簡易構成図/容量の考え方/テスト手順)をお送りします。受付は止めない——その一歩を、資料からご一緒に。

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