配車を止めない—地域密着タクシー事業者が市民の足であり続けるための「電源×通信」の新設計
2025.11.05 交通・物流 BCP・レジリエンス 管理人

配車を止めない—地域密着タクシー事業者が市民の足であり続けるための「電源×通信」の新設計
※本稿は規模の大小ではなく、現場の運用連続性という観点から整理しています。末端と通信まで保護範囲を広げる“設計転換”をご提案します。
1|現状分析(据置型UPS設置の場合)と、なお残るリスク
現状分析|据置型UPSの強み
- 常時インバータで瞬断・電圧変動に強く、負荷品質を一定に維持。
- 大容量・高出力でサーバールームやPBXラックなど“基幹”を一括保護。
- 自家発電機との親和性が高く、保守運用の標準化が進めやすい。
それでも発生し得るリスク——保護範囲が“基幹”に偏ると、配車の現場動線にすき間が生まれます。
- 末端無保護:PBX/SIP/FW/ルータ/PoE/NVR/配車PCなどが瞬停・瞬断の影響を受けやすい。
- 回線単一:光1本や災害時ふくそう対策不足で、輻輳・断線・計画工事時の受付停止リスク。
- 電話待機系不足:PBXやクラウドPBX障害時の受電ゼロを想定した切替手順・待機番号が未整備。
- 監視・通知の薄さ:電源・回線の状態監視が限定的で、兆候検知・初動対応が遅れがち。
結論はシンプルに、「据置UPSはそのままに、末端と通信までカバーを広げる」——この設計転換が、配車を止めない最短ルートです。
2|こんな解決方法があります—無瞬停×二重回線×分散UPS
「配車を止めない」ための選択肢として、以下の組み合わせがあります。すでに一部を導入済みでも、足りない“すき間”を埋めると体感は一変します。
- 電源:可搬型大容量UPS『パーソナルエナジー・ポータブル(以下、PEP)』は、定格出力2kW(AC併用時3kW)、瞬間最大出力4kW(AC併用時6kW)。モジュール拡張〜約50kWhまで。発火危険性のあるリチウムイオンバッテリー不使用(AGMバッテリー)で、工事不要・可搬型、且つ火災リスクゼロ。
- 通信:光+LTE/5G(必要に応じStarlink)を常時待機・無感フェイル。VRRP/SD-WANで自動切替。
- 分散UPS:PBX・SIP・FW/ルータ・PoE・配車PC・NVRなど末端も保護(既設UPSは活用・共存)。
- 運用:「止める・守る・再開」の手順書+見守りPCにメールで通知で兆候対応を平時から定着。
3|選べる構成例
ライト:配車室の“核”だけは絶対落とさない
- 守れる範囲:瞬停・短時間停電/単一回線の瞬断。
- 想定課題→対策:
- 末端無保護 → PEPで配車PC×4・PBX・ルータ・PoE・NVRを無瞬停化
- 回線単一 → 光+LTE/5Gの二重化+自動フェイル
- 兆候未検知 → 見守りPCが電圧/温度/回線を監視しメールで通知
- 設計目安:重要負荷800–900W・短時間停電〜数時間の延命
スタンダード:72時間の事業継続をデフォルトに
- 守れる範囲:長時間停電(〜72h)/PBX障害時の受電維持。
- 想定課題→対策:
- 停電長期化 → PEP拡張モジュールで容量段階拡張/外部給電(太陽光・発電機・車載DC)
- PBX障害 → 待機系クラウドPBXへ即切替(番号はそのまま)
- 消費過大 → 計画給電レシピで照明/空調を段階停止
- 設計目安:重要負荷主体で最大72h運用
アドバンス:通信断にも揺れない“攻めのBCP”
- 守れる範囲:広域回線断/センター障害/地域災害時の配車継続。
- 想定課題→対策:
- 広域断・輻輳 → 光+LTE/5G+Starlinkの三重回線
- 末端拠点ダウン → 営業所・中継局にもPEPミニ(サテライトBCP)
- DR不足 → クラウド併用を前提にしたネット設計(ハイブリッドDR)
据置UPSの特長とPEPの役割:据置は高出力・長時間・発電機連携に強く“基幹”の要。PEPは無瞬停×可搬×分散×拡張で“末端と通信のすき間”を埋める。両立・併用で弱点ゼロへ。
4|72時間レシピ:負荷と運用の設計例
- 対象負荷:PBX/SIP/FW/ルータ/PoE(カメラ・AP)/配車PC×4/NVR(合計800–900W想定)
- 電源計画:PEP本体+拡張で必要容量を段階設計。昼間は照明落とし・ディスプレイ輝度制御で消費最適化。
- 外部給電:太陽光・小型発電機・車載DCの多様な取り込み(押上モード)。
- 監視・通知:見守りPCがバッテリー・回線状態を監視し、メールで通知+減災オペの手順書化。
5|導入ステップ(現地PoC→設置まで)
- オンライン診断(無料):負荷・配線・回線・PBXの現況把握、障害履歴ヒアリング。
- PoC(約2週間):PEP仮設→瞬停注入テスト→通話/IVR/配車端末の連続性を実測・動画化。
- 本番設計:ライト/スタンダード/アドバンスから選択、費用対効果(回収年数・年間効果額・5年総コスト)で提示。
- 運用訓練:メール通知→一次対応→復旧の手順を年1回の訓練に定着。
6|FAQ(よくある質問)
Q. 既存の据置UPSや他社小型UPSは活かせますか?
A. はい。原則PEPで統一しつつ、現場に既設があれば活用します。置換・共存も設計します。
Q. 回線は二重化が必須?
A. はい。光+LTE/5G(必要に応じ衛星)で常時待機・無感フェイルを推奨します。
Q. 72時間は本当に可能?
A. 重要負荷を絞った計画給電レシピ+外部給電(太陽光/発電機/車載DC)で現実的に設計します。
Q. 医療機器やモーター負荷に強い?
A. PEPはモーター/誘導負荷に強い設計です(コンプレッサ・ポンプ等の高始動電流にも安定)。
* 2020年9月〜2025年10月 自社確認。対象:HPP/HBB。
参考資料(外部)
- 中小企業BCP策定運用指針(中小企業庁)
- サイバーセキュリティ経営ガイドライン Ver3.0(経産省/IPA)
- 同 プラクティス集 第4版(IPA)
- 2018年ソフトバンク通信障害 概要(記事・総務省指導)
- 災害時のふくそうと回避(消防庁)
- 無停電電源装置(UPS)ユーザーズガイドライン(JEMA)
※上記は一般論・公開情報に基づく参考リンクです。特定企業の運用を断定するものではありません。
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