エコワンソーラーは元が取れるのか?
1.エコワンソーラーとは何か? その仕組みと特徴
エコワンソーラーは、ガスと電気のそれぞれの長所を組み合わせた「ハイブリッド給湯・暖房システム」であるエコワンに、太陽光発電システムを連携させたものです。
エコワン(ECO ONE)の基本的な仕組み:
エコワンは、ヒートポンプと高効率ガス給湯器(エコジョーズ)を組み合わせたシステムです。
* ヒートポンプ: 大気中の熱を利用してお湯を沸かす電気の力を使います。エコキュートと同様の仕組みで、少ない電気でお湯を効率的に沸かします。
* エコジョーズ: ガスを燃焼させる際に発生する排熱を再利用して水を温める、高効率のガス給湯器です。
この2つの熱源を、お湯の使用量や季節、外気温などに応じて最適なバランスで使い分けることで、高い省エネ性を実現しています。例えば、お湯を大量に使う場合や外気温が低い冬場など、ヒートポンプだけでは効率が悪い場合にガス給湯器がサポートする、といった運転を行います。
エコワンソーラーにおける太陽光発電の連携:
エコワンソーラーでは、このエコワンのシステムに太陽光発電システムを連動させます。特に注目すべきは、「PV活用モード」と呼ばれる機能です。これは、昼間に太陽光発電で発電した電力の余剰分を、エコワンのヒートポンプユニットが優先的に消費してお湯を沸かすというものです。
これにより、以下のメリットが生まれます。
* 自家消費率の向上: 発電した電力を売電するだけでなく、自宅で消費することで、電力会社から電気を購入する量を減らせます。現在の売電価格は下落傾向にあるため、自家消費による電気代削減効果は、売電収入よりもメリットが大きいとされています。
* さらなる光熱費削減: 太陽光発電による無料の電気でお湯を沸かせるため、エコワン単体よりもさらに給湯にかかる光熱費を削減できます。
2.エコワンソーラーの導入費用と光熱費削減効果
「元が取れるか」を判断する上で、最も重要な要素は「初期費用」と「光熱費削減効果」です。
2.1. 導入費用(初期費用)
エコワンソーラーの導入費用は、一般的なガス給湯器やエコキュートと比較して高額になる傾向があります。これは、エコワン本体が高機能であることに加え、太陽光発電システムの設置費用が加わるためです。
* エコワン本体の費用: エコワン本体の価格は、機種やタンク容量によって異なりますが、一般的なガス給湯器の約2~3倍、エコキュートより若干高めとされることが多いです。具体的な価格帯としては、40万円~70万円程度が目安となるようです。
* 太陽光発電システムの費用: 太陽光発電システムの設置費用は、パネルの容量や設置環境によって大きく変動しますが、一般的には100万円~150万円程度が相場とされています。
したがって、エコワンソーラーを導入する場合の総費用は、150万円~220万円程度が目安となるでしょう。この金額は、住宅の新築時かリフォーム時か、また設置業者によっても変動します。
2.2. 光熱費削減効果
エコワンソーラーによる光熱費削減効果は非常に高いと言えます。これは、ガスと電気を効率的に使い分け、さらに太陽光発電の自家消費を最大化する仕組みによるものです。
* 従来型ガス給湯器との比較: エコワンは、従来型ガス給湯器と比較して、給湯コストを約1/3程度に削減できるとされています。年間約6.8万円の削減効果が見込まれるというデータもあります。
* エコジョーズとの比較: 高効率ガス給湯器であるエコジョーズと比較しても、エコワンは年間約5.6万円の光熱費削減効果があるとされています。
* エコキュートとの比較: エコキュートと比較した場合、エコワンの方が年間の光熱費を約3.5万円抑えられるというシミュレーションもあります。これは、エコキュートが電気のみでお湯を沸かすのに対し、エコワンはガスを併用することで、電気代が高騰した場合でも安定して効率的な運転ができるためと考えられます。
* 太陽光発電連携による追加効果: 太陽光発電の余剰電力をエコワンで自家消費することで、さらに光熱費を削減できます。エコジョーズと比較して、年間約6.7万円お得になるというシミュレーションもあります。太陽光発電とエコワンを併用することで、年間約10万円以上のコスト削減も期待できるとされています。
これらの情報を総合すると、エコワンソーラーを導入した場合の年間の光熱費削減額は、ご家庭の状況(ガス種別、家族構成、お湯の使用量、日照条件など)にもよりますが、年間で5万円~15万円以上の削減が見込める可能性があります。特に、プロパンガスを使用している家庭や、家族の人数が多くお湯の使用量が多い家庭ほど、高い削減効果が期待できます。
3.補助金の活用
初期費用が高額なエコワンソーラーですが、国や地方自治体からの補助金を活用することで、導入費用を抑えることが可能です。
* 国の補助金「給湯省エネ事業」: 経済産業省が実施している「高効率給湯器導入促進による家庭部門の省エネルギー推進事業費補助金(給湯省エネ事業)」の対象設備となることが多く、エコワンの導入で最大15万円の補助金が支給されるケースがあります。
* さらに、蓄熱暖房機や電気温水器(エコキュートではない)を撤去する場合は、蓄熱暖房機で10万円、電気温水器で5万円が補助金として加算される可能性もあります。
* 地方自治体の補助金: 各地方自治体でも、省エネ設備の導入に対して独自の補助金制度を設けている場合があります。国の補助金と併用できるケースもあるため、お住まいの自治体のホームページなどで最新情報を確認することが重要です。
これらの補助金を活用することで、初期費用を数万円から十数万円、場合によってはそれ以上削減できるため、費用回収期間を短縮することに大きく貢献します。
4.費用回収期間(元が取れるまでの期間)
エコワンソーラーの費用回収期間は、上記の導入費用、光熱費削減効果、補助金の有無によって大きく変動します。
仮に、導入費用が200万円(エコワン本体+太陽光発電)、年間光熱費削減効果が10万円と仮定した場合、単純計算では20年かかることになります。しかし、ここに補助金を考慮したり、電気料金やガス料金の今後の変動を加味したりする必要があります。
* 補助金活用の場合: 例えば、国からの補助金15万円があった場合、実質的な初期費用は185万円となり、回収期間は18.5年に短縮されます。
* 光熱費の高騰: 近年、電気料金やガス料金は高騰傾向にあります。将来的にこれらの料金がさらに上昇すれば、光熱費削減効果はさらに大きくなり、回収期間が短縮される可能性があります。
* 自家消費率の高さ: 太陽光発電で発電した電気を自家消費する割合が高いほど、電力会社からの購入電力量が減り、光熱費削減効果が高まります。蓄電池を併用することで、さらに自家消費率を高め、夜間や災害時にも太陽光発電の電力を有効活用できます。
* 家族構成と使用量: 家族の人数が多く、お湯の使用量が多い家庭ほど、エコワンソーラーによる恩恵が大きくなり、回収期間が短縮される傾向にあります。
一般的に、太陽光発電単体の費用回収期間は10年~15年程度とされています。エコワンソーラーの場合、システムが複雑になる分、単体よりも長くなる可能性もありますが、10年~20年程度が一般的な目安となるでしょう。条件が良ければ10年を切る可能性もあれば、悪ければ20年近くかかるケースもあり得ます。
ただし、太陽光発電は投資回収後も発電を続けるため、長期的に見れば確実に「元が取れる」投資であると言えます。また、エコワンの寿命目安も約10年~11年とされており、この期間で光熱費削減効果が得られることを考えると、トータルでの経済性は高いと言えます。
5.エコワンソーラーのその他のメリットとデメリット
経済性だけでなく、エコワンソーラーには以下のようなメリットとデメリットがあります。
5.1. メリット
* 環境負荷の低減: 高効率な運転により、CO2排出量を大幅に削減できます。地球温暖化対策に貢献したいと考える家庭にとっては大きなメリットです。
* お湯切れの心配がない: エコキュートは貯湯タンクのお湯を使い切ると沸き上げに時間がかかり「お湯切れ」の心配がありますが、エコワンはガス給湯器がバックアップするため、湯切れの心配がほとんどありません。
* 災害時の安心感: 停電時でも、ガスが供給されていればガス給湯器で最低限のお湯を供給できます。また、太陽光発電と蓄電池を組み合わせることで、停電時でも電力を使用できるため、災害時のライフライン確保に貢献します。
* ZEH(ゼロエネルギーハウス)への貢献: 高い省エネ性能を持つエコワンソーラーは、ZEHの実現に大きく貢献する設備として注目されています。
* 安定した熱源: ガスと電気の両方を使用するため、どちらかの供給が止まっても、もう一方で補完できる可能性があります(例えば、停電時でもガスが供給されていればお湯が出せる)。
* 10年間のメーカー保証: エコワンや太陽光発電の主要機器には、10年程度のメーカー保証が付帯していることが多く、故障時の修理費用を心配せずに済みます。
5.2. デメリット
* 設置スペースの確保: ヒートポンプユニット、貯湯タンク、ガス給湯器、太陽光パネルなど、多くの機器を設置するため、ある程度のスペースが必要です。
* 騒音問題: ヒートポンプユニットは運転時に低周波音が発生することがあります。隣家との距離や設置場所によっては、騒音トラブルになる可能性もゼロではありません。
* メンテナンスの必要性: 長期間安定して稼働させるためには、定期的なメンテナンスが必要です。特に太陽光発電システムは、4年に1回程度の点検が推奨されており、その費用は1回あたり5万円~10万円程度が目安となります。パワーコンディショナーなどの周辺機器は10年程度で交換が必要になる場合があり、その費用も考慮しておく必要があります。
* 光熱費が安い家庭での効果の限定性: もともと光熱費が安い家庭や、お湯の使用量が少ない単身世帯などでは、導入による光熱費削減効果を実感しにくい場合があります。
6.まとめ:「元が取れる」かどうかはケースバイケース
エコワンソーラーが「元が取れるか」どうかは、一概に「はい」とも「いいえ」とも断言できません。しかし、長期的な視点で見れば、多くの家庭で十分に元が取れる可能性が高いと言えます。
元が取れやすいケース:
* プロパンガスを使用している家庭(プロパンガスは都市ガスよりも光熱費が高いため、削減効果が大きい)
* 家族の人数が多く、お湯の使用量が多い家庭
* 日照条件が良く、太陽光発電の発電量が多い地域
* 補助金を活用できる家庭
* 電気代・ガス代の高騰を懸念している家庭
元が取れにくい可能性があるケース:
* もともと光熱費が非常に安い家庭
* お湯の使用量が少ない単身世帯や二人暮らし
* 初期費用を全額自己負担し、短期での回収を期待する家庭
最終的な判断のポイント:
* ご自身の家庭の現状を把握する: 現在のガス代、電気代、お湯の使用量などを詳細に把握しましょう。
* 導入費用の見積もりを取る: 複数の業者から見積もりを取り、補助金適用後の実質負担額を確認しましょう。
* シミュレーションを行う: 導入業者に、ご自身の家庭状況に応じた光熱費削減額と費用回収期間のシミュレーションを依頼しましょう。
* 長期的な視点を持つ: エコワンソーラーは、短期的な投資回収よりも、10年、20年といった長期的な視点での光熱費削減、環境貢献、そして災害時の安心感といったメリットを享受するものです。
エコワンソーラーは、初期費用は高額ですが、その高い省エネ性と太陽光発電との連携による光熱費削減効果は非常に魅力的です。補助金を活用し、ご自身の家庭の状況に合ったシミュレーションを行うことで、「元が取れる」最適な導入プランを見つけることができるでしょう。持続可能な社会への貢献と、将来の光熱費の不安軽減を両立したいと考える方にとって、エコワンソーラーは有力な選択肢の一つと言えます。