法人でできる光熱費削減【完全ガイド】〜コスト削減と脱炭素経営を両立する実践的アプローチ〜

2025.07.11 脱炭素 法人 光熱費削減 ブログ 管理人

はじめに:なぜ今、法人の光熱費削減が急務なのか?

近年、国際情勢の不安定化に伴う燃料価格の高騰や、再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)単価の上昇などを背景に、電気・ガス料金はかつてないほど高騰しています。これは、あらゆる業種の企業経営にとって深刻な問題であり、利益を圧迫する大きな要因となっています。

製造業であれば工場の稼働、小売業であれば店舗の照明や空調、オフィスワーク中心の企業であってもPCやサーバーの稼働など、事業活動に光熱費は不可欠です。このコストをいかに抑制するかは、企業の競争力維持、ひいては持続的な成長のために避けては通れない経営課題と言えるでしょう。

さらに、近年では単なるコスト削減の文脈だけでなく、企業の社会的責任(CSR)やESG(環境・社会・ガバナンス)投資の観点からも、エネルギー消費の削減、すなわち脱炭素経営への取り組みが強く求められています。光熱費削減は、経済的なメリットと環境配備への貢献を両立させる、まさに一石二鳥の施策なのです。

本記事では、法人が取り組むべき光熱費削減策を、「①現状把握と分析」「②すぐにできる運用改善」「③契約の見直し」「④設備投資による抜本的改善」「⑤全社的な体制づくり」という5つのステップに分け、明日から実践できる具体的な方法から、中長期的な視点での戦略まで、網羅的に解説します。

ステップ1:現状把握と分析 〜全ての削減は「見える化」から始まる〜

効果的な光熱費削減の第一歩は、自社が「いつ」「どこで」「何に」エネルギーを消費しているのかを正確に把握すること、すなわち「エネルギーの見える化」です。感覚的な節約努力には限界があり、データに基づいた客観的な分析こそが、的確な対策を導き出します。

1-1. 検針票の詳細な確認

まずは、毎月届く電気やガスの検針票をただの支払票としてではなく、貴重なデータソースとして活用しましょう。最低でも過去1〜2年分の検針票を保管・データ化し、以下の項目を確認します。

 * 使用量(kWh, m³)の推移: 季節変動(冷暖房需要)、操業度や営業時間の変動と使用量の相関関係を分析します。

 * 料金単価の推移: 燃料費調整額や再エネ賦課金の影響で、単価がどのように変動しているかを確認します。これにより、使用量が変わらなくても料金が上昇している実態を把握できます。

 * 最大デマンド(契約電力): 特に高圧・特別高圧電力を契約している法人の場合、電気の基本料金は過去1年間(当月と前11ヶ月)の最大需要電力(デマンド値)で決まります。デマンド値が突出して高い時間帯を特定することが、基本料金削減の鍵となります。デマンド値は30分ごとの使用電力の平均値であり、検針票で確認できます。

1-2. エネルギーマネジメントシステム(EMS)の導入

より詳細な分析を行うためには、エネルギーマネジメントシステム(EMS)の導入が非常に有効です。

 * BEMS(Building Energy Management System): ビル向けのシステムで、施設全体の電力使用量をリアルタイムで監視・制御します。空調や照明などを最適に自動制御し、快適性を損なわずにエネルギー消費を削減できます。

 * FEMS(Factory Energy Management System): 工場向けのシステムで、生産設備ごとのエネルギー消費量を詳細に把握できます。生産計画と連携させ、エネルギー効率の悪い設備や工程を特定し、改善につなげることが可能です。

これらのシステムを導入することで、エネルギー消費の「見える化」が実現し、「どこに無駄があるのか」をデータに基づいて特定できるようになります。クラウド型の安価なサービスも増えており、中小企業でも導入しやすくなっています。

ステップ2:すぐにできる運用改善 〜コストゼロで始める即効性のある削減策〜

現状分析で課題が見えたら、まずはコストをかけずに実施できる運用改善から着手しましょう。従業員一人ひとりの意識と行動の変革が、大きな削減効果を生み出します。

2-1. 空調の運用改善

オフィスや店舗のエネルギー消費の約半分を占めるとも言われる空調は、運用改善効果が最も出やすい設備です。

 * 適正な温度設定の徹底: 環境省が推奨する室温は、夏は28℃、冬は20℃が目安です。ブラインドや遮熱カーテンを活用して日射を調整したり、サーキュレーターで空気を循環させたりすることで、体感温度を調整し、設定温度の緩和につなげます。

 * フィルターの定期的清掃: エアコンのフィルターが目詰まりすると、冷暖房効率が大幅に低下します。2週間に1回程度の清掃をルール化しましょう。これだけで消費電力を5〜10%削減できると言われています。

 * 室外機周辺の環境整備: 室外機の吹き出し口の前に物を置くと、排熱が妨げられ、効率が低下します。周辺を整理整頓し、風通しを良く保ちましょう。

 * ゾーニングと間仕切り: 人がいないエリアの空調を停止したり、パーテーションやビニールカーテンで空間を仕切ったりすることで、空調の対象範囲を限定し、無駄をなくします。

2-2. 照明の運用改善

空調に次いで電力消費が大きいのが照明です。

 * こまめな消灯の徹底: 昼休みや会議室の不使用時、退勤時など、不要な照明はこまめに消すことを全社で徹底します。担当者を決めて巡回するなどのルール作りも有効です。

 * 自然光の積極的な活用: 日中はブラインドを調整し、積極的に自然光を取り入れることで、照明を点灯する時間を減らします。

 * 照度の最適化: 必要以上に明るい場所はないか、JISの照度基準などを参考に点検します。作業に支障のない範囲で、間引き点灯(一部の照明を消灯する)を検討しましょう。

2-3. OA機器・その他機器の運用改善

 * 省エネモードの設定: パソコン、コピー機、プリンターなどのOA機器は、一定時間使用しない場合にスリープモードや休止状態に移行するよう、省エネ設定を全社で統一します。

 * 退勤時の主電源オフ: 長時間使用しない場合は、待機電力を削減するため、電源タップのスイッチを切る、コンセントからプラグを抜くなどの対応を徹底します。

 * サーバーの仮想化・統合: 複数の物理サーバーを1台に集約する「サーバー仮想化」は、サーバー自体の消費電力と、サーバー室の空調にかかる電力の両方を大幅に削減できる有効な手段です。

ステップ3:契約の見直し 〜電力・ガス自由化のメリットを最大限に活かす〜

2016年の電力小売全面自由化、2017年のガス小売全面自由化により、法人は契約する電力会社・ガス会社を自由に選べるようになりました。現在の契約内容を見直すだけで、大幅なコスト削減が実現できる可能性があります。

3-1. 電力・ガス会社の切り替え(新電力・新ガス)

大手電力・ガス会社よりも割安な料金プランを提供する「新電力」「新ガス」への切り替えは、最も代表的な見直し手法です。

 * 切り替えのメリット:

   * 料金の削減: 自社の電力・ガスの使用状況(使用量、使用時間帯など)に合った最適なプランを選ぶことで、料金単価そのものを引き下げることができます。

   * 手続きの簡便さ: 多くの場合、Webや書面での申し込みだけで切り替えが完了します。スマートメーターが未設置の場合を除き、原則として工事は不要で、停電のリスクもありません。

   * 付加価値サービス: 再生可能エネルギー由来の電力を供給するプランや、省エネコンサルティングが付帯するサービスなど、多様な選択肢があります。

 * 選定のポイント:

   * 複数の事業者から見積もりを取得し、料金シミュレーションを比較検討する。

   * 料金体系(固定単価か、市場連動型か)を理解する。市場連動型は価格変動リスクがあります。

   * 契約期間や違約金の有無を確認する。

   * 事業者の供給実績や信頼性を確認する。

3-2. 契約プランの見直し

現在の電力会社との契約内でも、より有利なプランに変更できる場合があります。特に、時間帯によって料金単価が異なるプランは、工場の操業時間やオフィスの営業時間を工夫することでメリットを享受できます。

3-3. 契約電力(デマンド)の抑制

高圧・特別高圧電力の基本料金は、前述の通り「最大デマンド値」で決まります。このデマンド値を低く抑えることが、基本料金の恒久的な削減につながります。

 * デマンドコントロールシステム(デマコン)の導入: 設定した目標デマンド値を超えそうになると、自動的に警報を発したり、空調などの設備を一時的に制御したりするシステムです。快適性や生産性を大きく損なうことなく、ピーク電力を抑制できます。

 * ピークシフト・ピークカット:

   * ピークシフト: 電力のピーク時間帯(一般的に夏場の午後)に稼働させている設備を、夜間など電力需要の少ない時間帯に移行させる。

   * ピークカット: 複数の大型設備を同時に稼働させないよう、稼働スケジュールを調整する。

デマンド値を一度下げることができれば、その後の1年間の基本料金が安くなるため、非常に費用対効果の高い施策です。

ステップ4:設備投資による抜本的改善 〜長期的な視点で最大の削減効果を〜

運用改善や契約見直しには限界があります。長期的な視点で見れば、省エネ性能の高い設備へ更新することが、最も効果的で持続可能な削減策となります。初期投資は必要ですが、補助金や助成金を活用することで負担を軽減できます。

4-1. 高効率空調への更新

10〜15年以上前の業務用エアコンを使用している場合、最新の高効率モデルに更新するだけで、消費電力を30〜50%以上削減できるケースも珍しくありません。最新機種は省エネ性能が高いだけでなく、快適性や制御性も向上しています。

4-2. 照明のLED化

蛍光灯や水銀灯をLED照明に切り替えることは、もはや省エネの常識です。

 * 大幅な消費電力削減: 蛍光灯に比べて約50%、水銀灯に比べて約70〜80%の消費電力を削減できます。

 * 長寿命: LEDの寿命は蛍光灯の約4〜5倍と非常に長く、交換の手間やコストを大幅に削減できます。

 * その他のメリット: 瞬時に点灯する、紫外線が少ないため虫が寄りにくい、低温環境に強いなど、多くのメリットがあります。

初期費用はかかりますが、電気料金の削減とメンテナンスコストの削減により、多くの場合2〜5年程度で投資を回収できます。

4-3. 断熱性能の強化

建物の断熱性を高めることで、冷暖房のエネルギーロスを防ぎ、空調効率を大幅に改善できます。

 * 窓の断熱: 遮熱・断熱フィルムを窓ガラスに貼る、二重窓(内窓)を設置する、複層ガラスに交換するなどの方法があります。

 * 屋根・外壁の断熱: 遮熱塗料を屋根に塗布するだけでも、夏場の室温上昇を抑え、冷房負荷を軽減できます。

4-4. 自家消費型太陽光発電システムの導入

工場の屋根や敷地の遊休スペースに太陽光発電システムを設置し、発電した電気を自社で消費する「自家消費型太陽光発電」は、近年急速に導入が進んでいます。

 * 電気料金の削減: 電力会社から購入する電力量を直接的に削減できます。特に日中の電力使用量が多い事業所では絶大な効果を発揮します。

 * 再エネ賦課金の削減: 購入電力量が減るため、それに比例して課される再エネ賦課金の負担も軽減されます。

 * 非常用電源としての活用: 停電時にも事業を継続できるBCP(事業継続計画)対策としても有効です。

 * 企業価値の向上: 環境経営をアピールでき、企業イメージの向上や人材採用にも有利に働きます。

4-5. コージェネレーションシステム(CGS)の導入

ガスなどを燃料として発電し、その際に発生する排熱を給湯や冷暖房に利用するシステムです。エネルギーを総合的に効率よく利用できるため、電力と熱の両方を多く使用する工場、病院、ホテルなどで特に有効です。

【補助金・助成金の活用】

これらの設備投資には、国や地方自治体が提供する豊富な補助金・助成金制度を活用できます。代表的なものに、経済産業省資源エネルギー庁の「省エネルギー投資促進支援事業費補助金」などがあります。公募期間が限られているため、常に最新の情報をチェックし、専門家のアドバイスを受けながら計画的に申請を進めることが重要です。

ステップ5:全社的な体制づくりと従業員の意識改革 〜継続こそが力なり〜

光熱費削減は、一部の担当者だけが取り組んでも大きな成果は得られません。経営層の強いリーダーシップのもと、全従業員を巻き込んだ継続的な活動にしていくための体制づくりが不可欠です。

 * 省エネ推進チームの設置: 部門横断的なメンバーで構成される専門チームを立ち上げ、現状分析、目標設定、施策の企画・実行、効果測定などを担当させます。

 * 明確な目標設定と共有: 全社、部門、個人単位で「光熱費を前年比〇%削減する」といった具体的で測定可能な目標を設定し、全従業員で共有します。

 * 定期的な情報発信と啓発活動: 社内報やポスター、朝礼などを活用し、省エネの重要性や具体的な取り組み方法、活動の成果などを定期的に発信し、従業員の意識を高めます。

 * インセンティブ制度の導入: 削減目標を達成した部署や、優れた省エネアイデアを提案した従業員を表彰するなど、モチベーションを維持・向上させる仕組みを取り入れます。

まとめ

法人の光熱費削減は、目先のコスト削減に留まらず、企業の収益性、競争力、そして社会的信頼性を高めるための重要な経営戦略です。

本記事で紹介したように、そのアプローチは多岐にわたります。まずは「見える化」によって自社の現状を正確に把握し、コストをかけずに始められる「運用改善」から着手しましょう。そして、より大きな効果を目指すために「契約の見直し」や、補助金を活用した「設備投資」を中長期的な視点で計画的に実行していくことが成功の鍵となります。

最も重要なのは、これらの取り組みを一時的なキャンペーンで終わらせず、全従業員を巻き込んだ継続的な活動として企業文化に根付かせることです。小さな改善の積み重ねが、やがて大きな成果となり、貴社の持続的な成長を力強く支えることになるでしょう。

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