法人が今からできる電気代の削減方法【完全ガイド】

2025.07.24 電気代節約 エネルギーインフラパートナー 法人 光熱費削減 ブログ 管理人

はじめに:電気代削減が経営にもたらすインパクト

近年、国際的な燃料価格の高騰や再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)単価の上昇などを背景に、法人向けの電気料金はかつてないほど高騰しています。製造業における工場、商業施設、オフィスビルなど、事業活動に多くの電力を消費する法人にとって、電気代の上昇は収益を圧迫する深刻な経営課題です。

しかし、この状況を悲観的に捉えるだけではなく、むしろ**「コスト構造を見直し、収益性を改善する好機」と捉えることもできます。電気代の削減は、単なる経費節減に留まりません。削減によって得られたキャッシュフローを新たな設備投資や人材育成に振り向けることで企業の競争力強化に繋がり、さらには省エネルギーの推進によるCO2排出量の削減**は、企業の社会的責任(CSR)やSDGsへの貢献、ひいては企業価値の向上にも寄与します。

本記事では、法人が「今すぐ」取り組める短期的な施策から、中長期的な視点での抜本的な改革まで、電気代を削減するための具体的な方法を4000字以上にわたって網羅的に解説します。自社の状況と照らし合わせながら、最適な削減策を見つけるための一助となれば幸いです。

 1.【即効性あり】契約内容の見直しによる削減

設備投資などを伴わずに、まず最初に着手すべきなのが電力会社との「契約」の見直しです。電気の使い方を変えずに、契約内容を最適化するだけで大幅なコスト削減が期待できる場合も少なくありません。

1.1. 電力会社の切り替え(新電力の活用)

2016年4月の電力小売全面自由化により、すべての消費者が電力会社を自由に選べるようになりました。これにより、従来の地域電力会社(東京電力、関西電力など)だけでなく、「新電力」と呼ばれる多くの小売電気事業者が市場に参入し、多様な料金プランを提供しています。

◆新電力のメリット

* 割安な料金設定: 新電力は、自社の発電所を持たず、発電コストの安い電源を組み合わせたり、業務効率化を図ったりすることで、地域電力会社よりも割安な料金プランを提供しているケースが多くあります。

* 多様な料金プラン: 深夜割引、休日割引など、企業の電力使用パターンに合わせたユニークなプランが用意されています。また、再生可能エネルギー由来の電力を供給するプランもあり、環境経営をアピールしたい企業にも適しています。

* セット割引など付加価値: ガスや通信サービスとのセット契約による割引など、電力以外のサービスと組み合わせた付加価値を提供している事業者もあります。

◆新電力の選び方と注意点

電力会社の切り替えは、電気代削減に大きな効果をもたらす可能性がある一方で、事業者選びを誤るとかえって割高になるケースもあるため注意が必要です。

* 料金シミュレーションの実施: 複数の新電力から見積もりを取り、現在の電気使用量や使用パターン(検針票で確認可能)に基づいて、年間でどれくらいの削減効果が見込めるか必ずシミュレーションしましょう。

* 契約期間と違約金: 契約期間の縛りや、期間内の解約に伴う違約金の有無・金額を事前に確認することが重要です。

* 燃料費調整額の上限: 燃料価格の変動を電気料金に反映させる「燃料費調整額」に上限を設けているかどうかも重要なポイントです。上限がない場合、燃料価格が高騰した際に料金が大幅に上昇するリスクがあります。

* 電源構成: 再生可能エネルギー比率の高いプランや、特定の発電方法(FIT電気など)を多く含むプランなど、企業の環境方針に合った電源構成の事業者を選ぶことも可能です。

切り替え手続きは、多くの場合、Webサイトからの申し込みと検針票の情報を提出するだけで完了し、現在の電力会社への解約連絡も不要です。工事の必要もなく、停電のリスクもありません(送配電網は従来の電力会社が管理するため)。

1.2. 契約電力(デマンド値)の最適化

高圧電力(契約電力50kW以上)を契約している法人の場合、電気料金の「基本料金」は**「デマンド値(最大需要電力)」**によって決まります。デマンド値とは、30分ごとの電力使用量の平均値のうち、過去1年間で最も高かった値のことを指します。

つまり、たった30分間でも突出して多くの電気を使ってしまうと、その後の1年間の基本料金がその高い値に基づいて計算されてしまうのです。

◆デマンド値を下げる具体的な方法

デマンド値を抑制し、基本料金を削減するためには、「ピークカット」と「ピークシフト」が有効です。

* ピークカット: 電力使用量が最も多くなる時間帯(ピーク時)の消費電力を直接的に削減する方法です。

   * デマンドコントロールシステム(デマコン)の導入: 設定した目標デマンド値を超えそうになると、自動的にアラートを発したり、空調などの設備を一時的に制御したりするシステムです。人の手による管理の手間を省き、確実にデマンド値を抑制できます。

   * 手動での設備制御: デマンド監視装置などで電力使用状況を「見える化」し、ピーク時間帯に従業員が意識して空調を一部停止したり、生産設備の稼働を調整したりします。

* ピークシフト: ピーク時間帯の電力使用を、電力需要の少ない他の時間帯へ移行させる方法です。

   * 稼働スケジュールの見直し: 電力を多く消費する生産設備などの稼働時間を、昼間のピーク時から夜間や休日にずらす。

   * 蓄電池の活用: 料金の安い夜間に電力を蓄え、ピーク時間帯にその電力を使用することで、電力会社からの買電量を抑えます。

自社の電力使用パターンを分析し、どの時間帯にピークがきているのかを把握することが、デマンド値削減の第一歩です。

 2.【日々の運用改善】設備・機器の効果的な使い方

大規模な投資をせずとも、日々の運用方法を少し見直すだけで、着実に電気代を削減できます。全従業員で取り組むべき、基本的な省エネ活動です。

2.1. 空調設備の運用改善

オフィスや工場で消費電力の大きな割合を占めるのが空調設備です。

* 設定温度の適正化: 環境省が推奨する室温の目安(夏:28℃、冬:20℃)を基準に、無理のない範囲で設定温度を緩和します。「クールビズ」「ウォームビズ」を徹底し、従業員の服装で調整を促しましょう。設定温度を1℃変えるだけで、約10%の消費電力削減に繋がると言われています。

* フィルターの定期的な清掃: エアコンのフィルターが目詰まりすると、冷暖房効率が著しく低下し、余分な電力を消費します。2週間に1回程度の清掃が理想です。

* 室外機周りの環境整備: 室外機の吹き出し口の前に物を置くと、熱交換の効率が下がり、電力消費が増加します。また、直射日光が当たる場合は、日よけを設置するだけでも効果があります。

* サーキュレーターの併用: 冷たい空気は下に、暖かい空気は上に溜まりやすい性質があります。サーキュレーターで室内の空気を循環させることで、温度ムラをなくし、エアコンの設定温度を緩和しても快適性を保つことができます。

* ブラインドや遮熱シートの活用: 夏場はブラインドや遮熱効果のあるカーテン、窓ガラスに貼る遮熱フィルムなどを活用し、窓からの日射熱の侵入を防ぐことで、冷房負荷を大幅に軽減できます。

2.2. 照明設備の運用改善

空調に次いで電力消費の大きい照明も、運用改善による削減ポテンシャルが高い設備です。

* 不要な照明の徹底的な消灯: 昼休みや退勤時のオフィス、会議室や倉庫など、人がいない場所の照明はこまめに消すことを徹底します。担当者を決める、ポスターで注意喚起するなど、ルール化すると効果的です。

* 間引き点灯の実施: 業務に支障のない範囲で、照明器具の一部を取り外したり、点灯する本数を減らしたりします。窓際など、自然光で十分な明るさが確保できる場所から実施しましょう。

* 照度の適正化: JISの照度基準などを参考に、必要以上に明るくしすぎていないか確認し、適切な明るさに調整します。

* 人感センサーやタイマースイッチの導入: トイレや廊下、倉庫など、人の出入りが不規則な場所には人感センサー付きの照明を、使用時間が決まっている場所にはタイマースイッチを導入することで、消し忘れを確実に防ぎます。

2.3. OA機器・生産設備の運用改善

* 省エネモードの設定: パソコンやコピー機、複合機などのOA機器は、使用しない時間が一定続くと自動的に消費電力を抑える「省エネモード」や「スリープモード」に移行するよう設定します。

* 待機電力の削減: 終業時や休日など、長時間使用しない機器は主電源からOFFにすることを徹底します。個別のスイッチが付いた電源タップを活用すると、コンセントを抜かずに手軽に待機電力をカットできます。

* 生産設備の稼働最適化: 工場などでは、複数の設備を同時に立ち上げるとデマンド値が跳ね上がる原因になります。電源の投入を順番に行う、昼休みは完全に停止するなど、稼働スケジュールを工夫します。また、エアーコンプレッサーの圧力設定を必要最低限に見直す、配管からのエア漏れをなくすといった地道な改善も重要です。

 3.【未来への投資】省エネ設備導入による抜本的な削減

日々の運用改善と並行して、中長期的な視点で設備の更新を検討することも、電気代を抜本的に削減するためには不可欠です。初期投資はかかりますが、ランニングコストの削減効果や補助金の活用により、数年で投資を回収できるケースも少なくありません。

3.1. 照明設備のLED化

従来の蛍光灯や水銀灯からLED照明への切り替えは、省エネ設備投資の中でも特に費用対効果が高い施策の一つです。

* 圧倒的な消費電力削減: LED照明の消費電力は、一般的に蛍光灯の約半分、水銀灯の約4分の1程度です。照明にかかる電気代を大幅に削減できます。

* 長寿命による交換コスト削減: LEDの寿命は約40,000〜60,000時間と、蛍光灯の4〜5倍です。交換の手間やランプ購入費用といったメンテナンスコストを大幅に削減できます。特に、高天井の工場や倉庫では交換作業の負担が大きいため、メリットは絶大です。

* 発熱量の低減による空調負荷軽減: LEDは発熱量が少ないため、室温上昇を抑え、夏場の冷房負荷を軽減する二次的な効果も期待できます。

3.2. 高効率空調設備への更新

10年以上前の古い業務用エアコンを使用している場合、最新の高効率な機種に更新することで、消費電力を劇的に削減できる可能性があります。最新のエアコンは、インバーター制御技術の進化により、室温や負荷に応じて運転をきめ細かく制御し、無駄な電力消費を抑えます。GHP(ガスヒートポンプエアコン)など、電力以外のエネルギー源を活用する選択肢も検討に値します。

3.3. 自家消費型太陽光発電システムの導入

工場の屋根や敷地の空きスペースに太陽光発電システムを設置し、発電した電気を自社で消費する「自家消費型太陽光発電」は、電気代削減の切り札となり得る選択肢です。

◆導入のメリット

* 電気料金の削減: 電力会社から購入する電力量を減らすことで、電気料金、特に再エネ賦課金や燃料費調整額を削減できます。

* BCP(事業継続計画)対策: 災害などによる停電時にも、自立運転機能を使えば最低限の電力を確保でき、事業継続に貢献します。

* 環境貢献・企業価値向上: CO2を排出しないクリーンなエネルギーの利用は、脱炭素経営への取り組みとして社外にアピールでき、企業イメージの向上に繋がります。

* 税制優遇・補助金: 導入にあたっては、各種補助金や税制優遇措置を活用できる場合があります。

 ◆導入形態の比較

導入には主に「自己所有」「PPAモデル」「リース」の3つの形態があります。

| 導入形態 | 初期費用 | 期間中の電気代 | メンテナンス | 所有権 | 特徴 |

| 自己所有 | 必要 | 無料(発電分) | 自己負担 | 自社 | 長期的な利益は最大。資産計上。 |

| PPAモデル | 不要 | 使用量に応じた料金 | 事業者負担 | 事業者 | 初期投資ゼロで導入可能。オフバランス。 |

| リース | 不要 | 固定のリース料 | リース会社負担 | リース会社 | 初期投資ゼロ。発電量に関わらず費用固定。 |

自社の財務状況やエネルギー戦略に合わせて最適なモデルを選択することが重要です。

3.4. BEMS(ビル・エネルギー・マネジメント・システム)の導入

BEMSとは、ビルや工場内の空調、照明、その他の電力設備の使用状況をIT技術によって一元的に監視・制御し、エネルギー消費を最適化するシステムです。各設備の詳細な電力使用量を「見える化」し、無駄を発見したり、デマンド制御や空調・照明の最適運転を自動で行ったりすることで、無理なく継続的な省エネを実現します。

 4.組織全体で取り組むための体制づくりと意識改革

電気代削減を成功させるためには、一部の担当者だけでなく、全従業員を巻き込んだ組織的な取り組みが不可欠です。

* 省エネ推進体制の構築: 専門の担当者や部門横断的な委員会を設置し、目標設定、施策の立案、進捗管理などを主導する体制を作ります。

* 全従業員への意識啓発: なぜ省エネが必要なのか、具体的な方法、そしてその成果を社内報や朝礼などで定期的に共有し、全従業員の当事者意識を高めます。

* 目標と実績の「見える化」: フロアごとや部門ごとの電力使用量をグラフなどで分かりやすく掲示し、ゲーム感覚で削減に取り組めるような工夫も有効です。

* インセンティブ制度の導入: 削減目標を達成した部門を表彰するなど、成果に応じたインセンティブを設けることで、従業員のモチベーション向上に繋がります。

 5.補助金・助成金・税制優遇の活用

省エネ設備の導入には多額の費用がかかる場合がありますが、国や地方自治体は企業の省エネ投資を後押しするための様々な支援制度を用意しています。

代表的なものとして、経済産業省資源エネルギー庁が管轄する**「省エネルギー投資促進支援事業費補助金」**などがあります。これは、先進的な省エネ設備や、エネルギーマネジメントシステムの導入などに対して、投資費用の一部を補助する制度です。

また、中小企業が省エネ設備などを導入した際に、即時償却や税額控除が受けられる**「中小企業経営強化税制」**といった税制優遇措置もあります。

これらの制度は公募期間や要件が毎年変わるため、常に最新の情報を中小企業庁や地方自治体のウェブサイト、専門家などで確認し、積極的に活用を検討しましょう。

 まとめ

法人の電気代削減は、もはや単なるコストカットではなく、持続可能な経営を実現するための重要な戦略です。そのアプローチは多岐にわたります。

* 契約の見直し(電力会社・料金プラン・デマンド値)

* 日々の運用改善(空調・照明・OA機器など)

* 省エネ設備への投資(LED・高効率空調・太陽光発電など)

* 組織的な体制づくりと意識改革

* 補助金や税制優遇の活用

これらの施策を、**「即効性のあるもの」と「中長期的に取り組むもの」**に分け、自社の状況や体力に合わせて優先順位をつけて実行していくことが成功の鍵となります。まずは検針票を手に取り、自社の電力使用状況を把握することから始めてみてはいかがでしょうか。地道な一歩の積み重ねが、やがて大きな経営改善へと繋がっていくはずです。

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