違いは性能・価格ではなく“要件・目的”だった

2025.10.10 製造ライン最適化 医療DX BCP・事業継続(法人向け) 管理人

据置型UPSと可搬型UPSの比較。価格ではなく要件・目的・運用で選ぶことを示すサムネイル画像

大手メーカーUPSとパーソナルエナジー・ポータブルの違いは性能・価格ではなく“要件・目的”だった

電源選定はスペック比較の勝ち負けではありません。意思決定の核は、「どこを」「どれくらいの時間」「どの運用で」止めないかという要件定義です。本記事は、大手メーカーの据置型UPS(以下「据置型UPS」)と、可搬型大容量UPS×CVCF『パーソナルエナジー・ポータブル』公平に比較し、価格や単純性能では見えない設計上の違いを整理します。両者とも優れた選択肢であり、片方を貶める意図は一切ありません。むしろ現場では併用が最適解となるケースも少なくありません。製品仕様の詳細はパーソナルエナジー・ポータブル(製品ページ)をご参照ください。

用語の確認

CVCF(Constant Voltage Constant Frequency)

常時インバーター給電で電圧と周波数を一定に保つ運用。瞬停・ノイズ・電圧変動の影響を抑え、切替時間を意識しない無瞬停を狙います。パーソナルエナジー・ポータブルはCVCF運用を前提とします。

オンライン方式(据置型UPSの王道)

整流→インバーター→出力の連続系で常時給電。大容量化・冗長化・監視一括に強く、配電盤配下やサーバ室など面で守る設計と相性が良いのが据置型UPSの強みです。

設計思想の違い:面を守るか、点を機動的に守るか

観点据置型UPS(大手メーカー)可搬型UPS(パーソナルエナジー・ポータブル)
守り方 面保護:配電盤配下やサーバ室など広い領域を常時保護。監視・冗長を一括化。 点防御:対象機器ごとに無瞬停化。必要な場所へ持ち込み即応できる。
導入・移設 固定据付と電気工事が前提。移設には工事計画が必要。 約30kgクラスの本体で設置・移設が容易。病棟・検査室・ライン間の移動配備に向く。
長時間化の作り方 発電機・上位系統と連携し長時間運用を設計する王道。 本体0.612kWh+増設1.02kWh×最大49=約50kWh。運用に合わせて“カスタム設計”
保守 大手の保守網・部品供給・導入実績が盤石。長期運用の安心感。 AGMバッテリー(非リチウム)ホットスワップ保守で完全リサイクル・停止時間最小化を実現。
突入電流対策 盤側で一括管理できるが、負荷特性の個別検証が必要。 負荷分割+順次投入で起動を制御しやすい。点攻めに適する。
災害・臨時対応 臨時移設は困難。 可搬型で即対応。避難所/臨時拠点で通信・医療機器を継続運用しやすい。

パーソナルエナジー・ポータブルの強み(6つ)

現場の“止めたくない・止めれない”に合わせてカスタム設計。詳しい仕様はパーソナルエナジー・ポータブル(製品ページ)をご覧ください。

① 可搬型

約30kgクラス。設置・移設が容易で床荷重の制約を実質回避。ライン間・病棟間の移動運用に適合。

② 長時間連続供給

0.612kWh+1.02kWh×最大49=約50kWh。手術枠や営業時間に合わせて“時間を積む”思想。

③ 自由設計

合計kW×希望運転時間[h]×係数1.7で即試算。負荷分割+順次投入で突入制御。

④ 非リチウム(AGM)

熱暴走リスクが相対的に低い化学系。ホットスワップ保守で停止を最小化。

⑤ 外部電源を取り込む

発電機・太陽光パネルからの直流・ポータブル電源から電力を取り込み、整流化して出力。多層BCPを構築しやすい。

⑥ 国際認証

安全/EMCなどの証憑を型式ごとに整備(個別機番で提示)。海外据置・輸出案件へ展開しやすい。

出力電圧は100/110/115/120VAC(±3%)から選択可能。対象機器に合わせて設定します。事例・仕様の全体は可搬型大容量UPS×CVCF『パーソナルエナジー・ポータブル』へ。

要件からの選び方

  • どこを守る? 面(配電盤配下/サーバ室)か、点(EMR・検査機器・PLC・通信など)か。
  • どれくらいの時間? 安全停止か業務継続か。例:手術10分×n枠2時間の外来終日のライン
  • どう運用する? 常設か可搬か。災害時の移動や併用方針は?

この3点を明確にすれば、据置型UPS/パーソナルエナジー・ポータブル/併用の最適解が見えます。パーソナルエナジー・ポータブルの仕様は製品ページも参照ください。

クイック見積り式と設計の勘所

必要kWh ≒ 合計kW × 希望運転時間[h] × 1.7。係数はインバーター損失・温度・余裕分を含む安全側の目安です。突入電流が大きい機器は負荷分割+順次投入で起動順を設計。電圧は100/110/115/120VAC(±3%)から選択し、対象機器仕様に合わせます。

用途別シナリオ

医療(眼科・美容外科・検査室)

「手術1枠=何分?×回数」を基準にkWhを積み足す。顕微鏡・レーザー・EMR・通信をCVCFで無瞬停化。手術枠の延長は、売上と評判の安定に繋がります

社会福祉(特養・福祉避難所)

酸素濃縮器・喀痰吸引・通信・照明の同時確保。可搬型ゆえに病室・フロアを跨いで運用ができる。入所者の生命線を点で切らせない

製造(局所設備・検査工程)

検査機・テンパリング・PLCなどの要所へ配備。突入制御と併せて段取り・品質の“予定通り”を守る。1回の停止分を“止めない”ことで、コスト回収ができるかもしれません

オフィス/店舗/研究

ネットワーク・POS・分析装置など「止まると復旧が重い」点を守る。災害時は臨時拠点へ持ち出せるのがパーソナルエナジー・ポータブルの独自性。

据置型UPSを選ぶべきケース/パーソナルエナジー・ポータブルが効くケース

据置型UPSが力を発揮する場面

  • サーバ室や基幹NWを面で一括し、冗長化・監視を統合したい。
  • 施設全体の電源品質(高調波/電圧変動/サージ)を広く扱いたい。
  • 長期にわたり設備資産として標準化運用したい。

パーソナルエナジー・ポータブルが特に効く場面

  • 医療DX/手術・検査の点防御(機器単位の無瞬停+枠延長)。
  • 社会福祉/避難所の即応と可搬(病室間・拠点間の移動運用)。
  • 製造ラインの局所(要所だけを可搬に守り、突入は順次投入で制御)。

なお、据置型UPS+パーソナルエナジー・ポータブルの併用は理にかないます。面は据置で、点はパーソナルエナジー・ポータブルで。上位に発電機や太陽光自立出力や直流出力を重ね、多層BCPを構築してください。

費用対効果(TCO)をどう見るか

単体価格の比較では本質を見誤ります。評価軸は「停止1回の損失」(逸失利益・再立上げ・信用低下)と、「継続運用で守れる価値」です。パーソナルエナジー・ポータブルは「必要枠の時間を積む」ことで投資の粒度を細かく調整でき、段階導入が可能。据置型UPSは長期標準化により運用コストを平準化できます。意思決定は、停止確率×影響額回避コストのバランスで行いましょう。

運用とリスク

据置型UPSの留意点

据付スペース・工事期間・レイアウト制約がある一方、保守網と供給体制は強固で長期運用の安定に寄与します。

パーソナルエナジー・ポータブルの留意点

可搬の強みがある反面、施設全体を面で一括して守る用途では適材ではありません。対象機器×必要時間への集中投入で真価を発揮します。

導入プロセス

1)要件定義

守る範囲・必要時間・運用方法・対象機器の仕様(電圧/突入/常時負荷)を確定。

2)現地調査・試算

負荷測定と配線動線の確認。必要kWhの試算と、順次投入のシナリオ作成。

3)比較設計

据置型UPS案/パーソナルエナジー・ポータブル案/併用案を並列に評価。費用対効果と停止リスクの低減効果で比較。

4)導入・運用訓練

据付または搬入・設定。起動順序の訓練、保守スケジュールの明確化。

外部参考資料(一般指針)

  • 国土交通省『公共建築工事標準仕様書(電気設備工事編)令和7年版』第2節 UPS(定格・特性の考え方の参考):mlit.go.jp
  • 経済産業省 事業継続(BCP)関連ページ(基本指針・手引き):meti.go.jp/policy/bcp/
  • IPA(情報処理推進機構)IT-BCMの考え方:ipa.go.jp

上記は一般的な参考情報です。実適用は案件ごとに異なります。パーソナルエナジー・ポータブルの仕様と事例はパーソナルエナジー・ポータブル(製品ページ)をご確認ください。

まとめ:価格・性能ではなく、要件・目的で選ぶ

据置型UPSは「常設の要衝を、面で、長期に守る」のが得意。パーソナルエナジー・ポータブルは「対象機器を、必要時間分、機動的に守る」のが得意。二者択一ではなく、守る範囲 × 必要時間 × 突入対策 × 保守方針でロジカルに選ぶことが、最終的に費用対効果を最大化します。

免責:本記事は一般的な比較観点の整理です。最終判断は現地調査・要件定義に基づく個別設計で行います。

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