ポータブル電源の事故に注意!リチウムイオンバッテリー火災は直近3年で3倍、2021年は21件

2024.04.25 BCP 停電対策 パーソナルエナジー オフグリッド 管理人

ポータブル電源火災(リチウムイオンバッテリー)は直近3年で3倍、2021年は21件

消費者庁が2017年以降に集めた情報によると、焼け跡でポータブル電源が見つかった火災は全国で少なくとも55件発生しています。
本年2022年に入ってすでに2件東京都・広島県で発生しており、2021年度は21件、2020年度は9件と激増しています。
ほとんどの事例がポータブル電源(リチウムイオン)を充電中、当該製品及び周辺を焼損する火災となっており現在も原因を調査中です。

【出典 消費者庁事故情報データバンク】
ポータブル電源 リチウムで検索
https://www.jikojoho.caa.go.jp/ai-national/

ポータブル電源火災(リチウムイオンバッテリー)の異常発熱、火災はなぜ繰り返されるのか?

近年頻発する停電や災害時への備えとして、非常時に手軽に電源を確保できるポータブル電源が注目されています。
広域災害時には従業員の安否確認や取引先、客先との連絡のため、スマホ、モバイル端末やインターネットなど通信設備の維持は欠かせません。
復旧までの間、限られた電力を使って限定した業務を行うことが事業の早期再開に不可欠となってきています。
このような背景からポータブル電源の市場規模は、今後5年間で約10倍の市場規模に成長するとも言われています。
しかしながら、防災対策や事故、停電時のBCP対策として有効なはずのポータブル電源に起因する火災がこの数年、各地で頻発しています。

現在市場に流通しているポータブル電源の多くは「リチウムイオンバッテリー」を採用しており、それらの多くが、バッテリーのSDS(安全データシート)や構造や成分の記載のない製品です。
ポータブル電源による火災原因のほとんどは、搭載している「リチウムイオンバッテリー」による異常発熱、発火によるものですが、これでは万が一の火災事故時の火災原因調査の障害となり原因調査の長期間化は避けられません。

「リチウムイオンバッテリー」を搭載したポータブル電源による災害時への備えが、災害を誘発するという本末転倒な結果となっています。

火災原因調査中は営業・製造活動が制約され損害以上に営業損失が拡大

消防では火災が発生した場合、消防法によって「火災調査」を行うことが定められています。
この「火災調査」は調査を行うにあたっては、火災現場への立入り捜査権、関係者に対する質問権など、火災調査をする上で必要な権限が消防職員に対して与えられます。

「火災調査」は大きく2つに分けられます。

1つは、火災の原因を明らかにする「火災原因調査」です。この調査では出火原因だけでなく、火災が拡大するに至った原因や避難の様子、消防設備などを調べます。そうすることで危険な要素が明らかになり、今後の火災予防に役立てることができるのです。また、この調査は民事上、刑事上の責任を明確にするという役割も果たします。
そして2つめは「火災損害調査」です。こちらは火災による死傷者や罹災世帯など人的被害の状況、火災や消火の際に受けた物的損害の状況、損害額の評価などを行うものです。

火災現場では、広い領域にわたる科学的かつ専門的な知識を持った「火災原因調査員」が地道に火災の原因を究明していきます。当然に、その間の営業や製造などの事業活動は制約を受けることとなります。
約1年程度現場調査に要する場合、その現場保全の都合上、使用制限等が行われることとなり、火災事故調査報告書の公表など企業にとっての負担は少なくありません。

【参考 東京消防庁 消防雑学事典】
https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/libr/qa/qa_52.htm

ボヤでは済まない、ポータブル電源火災(リチウムイオンバッテリー)

2021年01月05日 神奈川県で発生した国内製造のポータブル電源(リチウムイオン)による火災原因について公表されています。
内容は以下の通りですが特筆すべきは、この製品には事故当時、電気製品が接続されていないと言うことです。

〇事故発生時、当該製品には電気製品は接続されておらず、近傍には非純正バッテリーが装着された他社製の充電式掃除機が置かれていた。
〇当該製品は著しく焼損し、樹脂製外郭が溶融、焼失していたほか、樹脂製外郭が焼損し、溶融した充電式掃除機が付着していた。
〇当該製品の内蔵バッテリーの焼損は著しく、確認できた39個のリチウムイオン電池セルのうち9個は破裂して封口体が外れ、電極体が飛び出していた。
〇封口体が残っていた電池セル30個は焼損していたが、電極体は外装缶内に残存していた。
〇内蔵のインバーター部は、一部のコイルに著しい焼損が認められたが、右側のコイル、コンデンサー、トランジスター等に外観上の損傷は認められず、内部配線に断線、溶融痕等は認められなかった。
〇制御基板は著しく焼損し、ほとんどの電気部品は脱落していたが、銅箔パターンの溶融及び基板の欠損は認められなかった。
〇当該製品は、内蔵のリチウムイオン電池セルが異常発熱して、出火した可能性が考えられるが、焼損が著しく、事故発生時の詳細な状況が不明のため、製品起因か否かを含め、事故原因の特定には至らなかった。

また、2021年1月25日、横浜第二合同庁舎(横浜市中区)の関東信越厚生局麻薬取締部横浜分室で発生した火災で、分室内で充電していた業務用のモバイルバッテリーは突然爆発し、火災炎上に至り、約30分後に鎮火に至りますが、消防車40台が出動する大騒ぎとなりました。
消防局による調査の結果、いずれのポータブル電源にも何らかの原因で異常発熱した跡があり、内部から発熱したとみられることや、周りの燃え方が激しいことなどから、ポータブル電源の異常発熱が火災原因になった可能性があるとみられています。

【参考映像 横浜の合同庁舎で火災 麻薬取締部分室か】

【参考資料】
・経済産業省 リチウム電池使用製品リコール情報
https://www.meti.go.jp/product_safety/recall/denki_5.html
・消費者庁 携帯発電機やポータブル電源の事故に注意!
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/caution/caution_053/assets/caution_053_210825_0001.pdf
・ポータブル電源「PS5B」の製品事故について
https://www.meti.go.jp/product_safety/consumer/ps5b_portable_power_supply.html
・名古屋市消防局予防部予防課 ポータブル電源の充電中に出火した事例
https://www.isad.or.jp/wp/wp-content/uploads/2021/02/no143_64p.pdf

非常用、BCP対策としてポータブル電源(リチウムイオンバッテリー)は不適格か?

まず、ポータブル電源の特性について考えてみましょう。
ポータブル電源はその名前が示す通り、ポータブル(portable)持ち運びできる、携帯できることが最大の特徴です。
特に災害時や停電時では、いつでも、どこでも電源確保が出来ることが最大の特徴と言ってもよいでしょう。
持ち運びでき、大容量で高出力、高性能であればあるほど、万が一の場合に役立つと思われがちです。しかしながら、ここに大きな落とし穴があります。

ポータブル電源(リチウムイオンバッテリー)の場合、18650や26650と表記される円筒形リチウムイオン二次電池を直列、並列に接続したものが採用されていることがほとんどです。
このような電池の最小サイズをセルと呼びますが、この円筒形セルは製品に搭載する際には角型セルやラミネートセルに比べてセル間の拘束力は弱いとされています。

18650や26650と表記されるリチウムイオンバッテリーセルは、円筒型の金属ケースの中に正極・負極・セパレータを重ねて巻き上げたロール状の構造体を封入して作られます。18650の場合は長さ6.5cm、直径1.8cmの円筒形金属ケースです。

リチウムイオンバッテリーの異常発熱の多くは、電池の「短絡(ショート)」が原因

リチウムイオンバッテリーが短絡すると瞬間的に大きな電流が流れるとともに激しい熱も発生しますのでリチウムイオンバッテリー内部の有機溶剤に引火・爆発などにつながる危険性があります。

【参考 電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)T01033】
リチウムイオン電池の劣化メカニズムの解明 -劣化機構とその診断法-
https://criepi.denken.or.jp/hokokusho/pb/reportDetail?reportNoUkCode=T01033

リチウムイオンバッテリーの異常発熱の要因としては「過充電」「外部短絡」「内部短絡」が知られています。
「過充電」「外部短絡」「内部短絡」により破壊されたリチウムイオンバッテリーはその高容量、高出力ゆえに爆発、火災に至る可能性がより高くなります。

「内部短絡」とは電池の中で起こる短絡(ショート)です。
持ち運びできる、携帯できる、ことが最大の特徴であるポータブル電源(リチウムイオンバッテリー)の場合、常に外部からの衝撃による「内部短絡」のリスクは高いと言え、外部衝撃による電池内部構造の破壊以外にも「セパレータ不良」「コンタミ(製品に混入した不純物)」「金属析出」などが、その要因として考えられています。
円筒形セルの組電池は他の形状に比べて衝撃に弱いことも大きな要因と考えれらます。また過充電時の金属析出だけでなく過放電も金属析出の原因となり、リチウムイオンバッテリー内部短絡の原因となります。

ポータブル電源はリチウムイオン蓄電池に該当しないため、電気用品安全法の規制対象ではない

インターネット通販や大手量販店のサイトでも、販売しているポータブル電源(リチウムイオンバッテリー)に関して、
「電気用品安全法の認証マークである(PSEマーク)が付いている製品は、技術基準に適合した製品として認証されているため、安心して使用できます。」
との表記が見受けられますが、電気用品安全法の規制対象製品であるリチウムイオン蓄電池は、出力が原理上直流に限られており、交流が出力できるポータブル電源はリチウムイオン蓄電池に該当しないため、電気用品安全法の規制対象ではありません。
つまり、ポータブル電源の大部分を占めるリチウムイオンバッテリーに関する安全規格は日本国内には存在しません。
これらの表記によって電気的知識の乏しい消費者が大きな誤解を受けていることは大きな問題です。

リチウムイオンバッテリーの内部短絡による火災の場合、電池が激しく損傷、炭化してしまったために原因の特定までは至らないケースがほとんどであり、問題が起こらないための対策はユーザー側では不可能です。

そしてもう一つの大きな問題は、これら危険なポータブル電源(リチウムイオンバッテリー)を製造しているメーカーのほとんどは海外メーカーであり、日本国内の製造物責任法(PL法)第2条3項によりこれらの製品を輸入した者が製造業者等に該当し、よって輸入者が責任を問われることになりますが、この国内輸入者もあいまいなケースが多く、万が一の損害発生時の責任の所在が不明確であるため、これら輸入販売されているポータブル電源(リチウムイオンバッテリー)はコンプライアンス上も大きな問題があると言えます。

このような背景によりリチウムイオンバッテリーを搭載した大容量のポータブル蓄電池はユーザーが万が一の事態の発生に備えた安全機構の設置や発生後の迅速な対応といった事後対応するほか方法が無い危険物である、と言わざるを得ません。

【参考 独立行政法人日本貿易振興機構】
輸入品の場合、その品質欠陥に起因する人的・財的損害が発生した際の製造物責任者は誰になりますか。
https://www.jetro.go.jp/world/qa/04A-000917.html

▼この記事に関するお問い合わせ先

株式会社Re(アールイー)
担当:髙橋
0533567200 または お問い合わせ まで

※この記事は、2022年2月19日に掲載した内容を再編集したものです。
※引用元:❒ 慧通信技術工業株式会社

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