トークライブ書き起こしvol.6 粟田隆央③『すべてのエネルギー消費者が、エネルギー生産者になる』
2018.05.22 ライブ書き起こし 管理人
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すべてのエネルギー消費者が、エネルギー生産者になる
あんまり自己紹介したことがないので簡単にうちの会社の紹介をしますと、2000年創業の会社なので今年で16年目になります。お陰さまでつぶれずに何とかやってますけど、言いたいこと言って好きなことやって16年やっているわけですけども、あんまりぶれていないというか、売れているから作ろうとかこれが今から流行だから作ろうとかいうのが全くなくて、基本的にぼくが面白いかなと思うものを作っております。たまたま買って頂けたりするお客様がいらっしゃるので何とか食いつないで今日まできております。
当社の企業理念と言うのは「すべてのエネルギー消費者が、エネルギー生産者になる」というのをスローガンにしています。
これはもう祝島の時からずっと思っていることなんですけど、消費者ってよく言うんですけど消費者って何だろうな?と。消費者だから保護しないといけないとか、消費者だから無知でいいとかそういうことじゃなくて、全員が生産者になっちゃえばですね。生産者目線で色んなことを考えられるわけだから、消費だけで終わっちゃってお金を払って何か食べたりとか、ディズニーランドじゃないんだけど何か楽しんだりして終わっちゃうんじゃなくて、やっぱり次の世代を作ったりとか、地域を作ったりとかいうことにならないかなぁ。世の中の少しでも多くの人がそういう生産者にならないかなという思いで当社の製品はすべてラインナップされています。
ですから、お客さんという考え方は全く私はしていなくって、パートナーというか共同開発者だ、という風に思っています。
なのでいわゆる消費者という方々は、たぶん私どもの製品は買えないですし、恐らく使えないからそんなのは買って頂かなくて結構ですということはずっと言っています。
必要とされるところへ
このパーソナルエナジーを開発・販売してからもう5年になります。お陰様で今まで納品したマシンで故障したとか止まったということは一度もございません。まあリッチな作りはしていますので正直非常に高い製品なんですけれども、止まらない壊れないということについては自信を持っています。
残念なことに震災が起こって一番最初にこの製品が活躍したのは石巻です。別にここに入れたいと思っていたわけではないんですけども、ここもやっぱり原発事故のあと東北電力の電気を使いたくないということで熱烈にお話を頂きましたのでじゃあということで持って行って、聖ハリストス教会というのが石巻の中州にあるんですけど、津波に流されて骨組みだけになっているところにプロジェクションマッピングをやるというイベントがたぶん東北でのデビューです。
病院とかこれも橋の下になりますけど、鳴門大橋と言って淡路島にかかっている橋の下にこのマシンが11台入っています。これは何でここに入っているかと言うと、海の上で潮がすごいので、電線を張っていたんですけどやっぱり電線が3年に1回錆びる、取り替えるのに3億円くらいかかると。このマシン高いんですが11台を入れても全然元がとれるということで採用頂いております。
ざっくり当社の案内をしたわけですけども、今日お話しする内容の中で、私は電気が専門なので今話題になっているというか、電力の自由化についてお話ししたいと思います。
今に始まった訳ではない電力の自由化、誰のため?
今年の4月から電力の自由化だという風に言われていますけども、何でしょうか?と。自由化って何て思われますか?というところなんですね。
自由って何でしょう?というのと同じでして、はっきりと分からないですね。平たく言うと、10個あった電力会社しか売れなかった電気が、誰でも売っていいよということになります。なるんですが、プロセスがありまして、電力の元々自由化っていうのが始まったのは1995年です。
これ阪神淡路大震災と同じになるんですけど、この時に、外圧です、正直なところ。日本の中で沸き起こった議論ではなくて、海外からの圧力で日本の電力市場というのが非常にクローズだから、オープンにしなさいと、ほぼ米国のお達しで始まりました。
第一次の改革が1995年、これ何が変わったかと言うとそれまで電力会社でしか発電所を持てなかったんですけども、この時の法改正によってIPS(インディペンデントパワーサプライ)、独立系の発電所を作ってもいいよということになりました。
大手ところでいうと丸紅さんであったりとか神戸製鋼であったりとかいうところが、LPGの発電所であったりとか火力発電ですね、石炭発電所というのを作れるようになったのが1995年の話です。だから今から30年くらい前に始まった話が今年の春から完全自由化になるという、30年かかっている話なので昨日今日の話ではありません。
その次、第二弾として1999年に部分自由化というものが始まります。これはですね、ちょっと色々事情があるんですけど、時の小泉政権の時ですね。いわゆる新自由主義と言って竹中平蔵さんがもう自由競争だみたいになってですね、言い出した頃なんですけど。
この頃と時を同じくして電力の二次改革というのが始まります。これによって大口電力の自由売買というものが始まります。この時に当時はPPSと言っていたんですけども、ダイヤモンドパワーだったりとか新しい会社が出来まして、市場調達並びに独立系の発電所から電気を買ってきて、電力会社の発電・配電網を使って売ってカネ儲けをしようという時代になりました。
その1999年の電気事業法の改正で、その後のロードマップというのが決められまして、2004年から500kw以上の需要家、これ大口のお客さんですね。電気需要家、スーパーとか、かなり大きな商業施設については料金が自由ですよと。
続いて50kw以上の電力自由化。これはもう皆さん家庭だから関係ないと思うんですけど、中小企業の電気を使う人たちまでの電気は自由にしていいよと。
自由にしていいよと言うものの電気も仕入れているわけですから、JEPXという日本卸電力取引所というのがありまして、3000万円を積むと誰でも会員になれるんですけど、3000万円払って電気をどれだけ買ってどれだけ売るかという需給の申告をして。
実は慧通信という当社もPPSになったものですから、正確に言うと今年の3月31日までは当社もPPSです。4月1日にその認可というか申請は返上します。何でかと言うと「電力自由化クソくらえ」というところがありまして、やってられるかというのもあって返すんですけど。
そもそもこの電力の自由化で50kw以上で仕入れる電気、この当時震災の前2010年までの話なんですが、大口の電力の一般価格、我々PPSが売っていたのは8円/kwhで仕入れて12円/kwhで売っていました。だから4円も。結構ぼろ儲けできます。
その8円の電気何かというと、原子力です。原子力の電気が内容はともかく放射能が出ようが出まいが一番安いという状況にあったわけでして、それがあるから売買ができたわけですね。
この世の春を謳歌していたんですが、そうもいかず原子力の事故が起こりまして、JEPXの卸売価格が逆転して今は15円/kWhくらいします。
役所とかって電力入札と言って1年間電力を供給する契約をするんですけど、12円で契約していると電気を使えば使うほどマイナス3円の赤字が生まれるという状況に今なっています。
面白いことが起こっているのが2011年から2016年にかけて家庭用の電気料金って今23円とか24円/kWhなんですけど、こういう大口の電力需要家の電気料金、我々がやっていた時はさっき言ったように12円なんですが、今21円とかします。
だからこのたった5年で9円くらい値上がりしていて、これは電気の原価としてはものすごく上がっていますね。だから企業の収益とか電気をいっぱい使う産業にとってみると非常にこの5年間というのはつらい状況になっています。
電力自由化で、電気料金は高くなる
それでその後の改正で2016年春から小口電力の完全自由化、つまり皆さんの一般家庭の電気がどこから買ってもいいよ、登録制になっていますので経済産業省の中でエネ庁というのがありまして、その中に審議会というのがあるんですけど、その中で登録をすると自由に電気を売っていいということになっていますが、ポイントが2018年から2020年までに小規模需要家は規制料金を選択可能と書いてあるでしょ?これ、すごいトラップなんですよ。電力自由化って、自由でしょう?安くなると思うでしょ?高くなるんですよ。自由だから。
高くなりすぎたら困る人たちはこの規制料金を、借金する時に変動金利と固定金利みたいな感じですね、高くなってもこれまでだよっていう規制料金と、完全自由料金が選択できる。
これ東京電力のホームページ検索して頂くと、電力自由化の経緯というサイトがあるので、もし帰ってネットとか見られるんだったらここにわかりやすく書いてあります。さっきの1995年から2016年になるまでの電力自由化がどういう風なプロセスで進んでいったか。
まぁ嫌味満載で書いています。電力会社目線で考える自由化ということです。