瞬停でお困りの方へ|生産・医療・FAを止めない電源対策

2025.09.23 非常電源 防災・BCP UPS/可搬型大容量 管理人

瞬停 対策|生産・医療・FAを止めない電源対策

“一瞬”なのに、止まる。だから先に手を打つ。

瞬停でお困りの方へ|生産・医療・FAを止めない電源対策

成形機が一瞬止まる、包装ラインの同期が外れる、医療機器がリセットする、検査装置のログが欠損する——それ、瞬停(短時間の電圧消失)瞬低(瞬時電圧低下)が原因かもしれません。この記事は「まず現場で何が起きるのか」「どのくらい起きるのか」「どこから守るべきか」を業界別の影響を中心に整理し、最後に100V系=可搬型大容量UPS×CVCF単相/三相200V系=独立電源という実装手段まで具体化します。費用対効果の高い順に、今日から検討を進められる内容です。

用語説明(共通言語)

瞬停と瞬低の違い

瞬停はごく短時間の停電(電圧がほぼゼロ)を指し、瞬低は短時間の電圧低下を指します。国際的な定義(IEEE 1159の定義要旨)では、電圧が定格の10〜90%に低下し0.5サイクル〜1分の事象を“Voltage Sag/Dip”とします。日本の送配電各社は、保護装置の動作に伴う0.07〜2秒程度の電圧低下を「瞬時電圧低下」として解説しています(関西電力送配電北陸電力送配電)。

発生メカニズム(なぜ“広域で同時”に起きるのか)

保護リレーの動作と系統切り離し

送電線の落雷・地絡・短絡・樹木接触・鳥獣接触・工事ミスなどにより大電流が流れると、系統保護のために故障区間を検出し遮断器で切り離します。この切り離しまでのごく短時間、周辺の広い範囲で電圧が下がる(または瞬断する)のが瞬低・瞬停です。メカニズムは各社が図解しています(北陸電力送配電関西電力送配電)。

現場観察のヒント:同時刻に多数拠点・多数装置でエラーが並発した/蛍光灯が一瞬暗くなった/UPSログにサグ記録が残った——これは系統側要因の可能性大。判定の考え方はDranetz(サグの指向性判定)も参考に。

統計データ(頻度・継続時間・原因内訳・主要事例)

頻度と継続時間の実態

系統全体統計は地域・年により変わりますが、“短いが頻発”が特徴です。海外の大規模観測では、サグ(不足電圧)は最も多い電力品質事象で、中央値0.26秒と報告されています(Dranetz技術資料)。日本でも各社が当日〜過去分の「瞬時電圧低下履歴」を公開しており、日々の発生実態が確認できます(東京電力パワーグリッド 停電情報(瞬時電圧低下履歴))。

継続時間帯現場で起こりやすい症状備考
〜0.10秒照明のチラつき/一部SMPSは踏ん張るログ化されにくいが累積で装置誤動作の種に
0.10〜0.20秒PLC/インバータの一時停止・リセット海外観測ではこの帯域が厚い(中央値0.26秒付近)
0.20〜0.50秒サーボ脱調・装置間同期崩れ・検査NG多発段取り替え・再立上げコストが顕在化
0.50〜2.00秒ライン停止・仕掛品廃棄・医療機器の強制再起動広域系統事象の疑いが高い

図1:継続時間帯と“現場症状”の対応(海外統計と国内現場ヒアリングの傾向を要約)

原因内訳(落雷だけではない)

主因は落雷ですが、設備不具合・工事ミス・鳥獣や樹木接触なども無視できません。実際に送配電事業者は、落雷以外の原因でも瞬低の発生を公表しています(例:機器不具合(中部電力パワーグリッド, 2023/3/15)工事作業ミス(同, 2024/11/6))。

想定原因代表シナリオ備考・対策の方向性
落雷送電線への直撃・誘導→保護動作SPD/等電位・機器耐性・無瞬断電源で被害最小化
設備不具合開閉所・機器故障広域影響の可能性。電源側冗長+CVCFで波形安定
工事・操作手順誤り・切替時の過渡計画停止でも瞬低は起こり得る。重要設備は独立化
鳥獣・樹木送電線の閃絡地域特性で頻度差。SPD+監視で早期検知

図2:原因内訳と対策の方向性(公表事例・規格資料の整理)

主要事例(年表)

日付地域原因(公表)代表的な影響出典
2024/11/06愛知・静岡送電線工事中の作業誤り 広域で瞬低発生(装置リセット等) 中部電力PG
2024/06/24長野公表情報 一部地域で瞬低・停電 中部電力PG
2023/03/15愛知・静岡・岐阜・長野開閉所内の機器不具合 広域で瞬低 中部電力PG

表1:送配電事業者の公表に基づく代表事例(直近例の抜粋)

業種別の影響ポイント(業界影響中心)

半導体・電子部品・FPD

フォト・エッチ・CVD・CMPなどのプロセス装置は、短時間の電圧降下でもプロセス停止・真空ロス・基板廃棄が連鎖し、復旧までの再コンディショニング時間仕掛品ロスが大きな損失に直結します。国際的には装置設計段階からSEMI F47への準拠(サグ耐性の下限を規定)が普及しています(SEMI公式解説EPRI資料の要点)。

医療(外来診療・手術・検査)

全機器がUPSを内蔵しているわけではなく、電子カルテ端末・画像診断周辺・滅菌/空調・検査装置の一部は瞬停でセッション破断・リブート・検査中断に。患者対応の遅延はクレーム・再検査コストに波及します。重要機器はUPS×CVCFで安定化し、バックヤードや受付等も最小限の無瞬断化で“医院全体のオペ”を守るのが費用対効果を高めるコツです。

FA/食品・物流(成形・充填・包装・搬送)

PLC・サーボ・インバータの同期崩れ原点復帰が頻発。短停止→段取り直し→廃棄増→遅延がサプライチェーン全体に影響します。センターピンとなるコントローラ群とQC工程を無瞬断化+波形安定し、ライン全体は段階導入(要所の独立電源化)で守ると実装が早くなります。

対策(電源を“自律安定化”する|UPS×CVCF / 独立電源)

100V系は、可搬型大容量UPS×CVCF「パーソナルエナジー・ポータブル」

可搬型でありながらCVCF(定電圧・定周波)を備え、瞬停・瞬低・周波数変動を吸収してクリーンな正弦波を供給します。要所(受付・サーバ/QC・検査・制御盤)を点で守りつつ、必要に応じて面へ拡張可能。製品の詳細は 可搬型大容量UPS『パーソナルエナジー・ポータブル』 を参照ください。

単相/三相200V系は、独立電源「パーソナルエナジー」

ライン単位・部屋単位で独立した安定電源を構成。既存設備との段階導入が可能で、要所から順に無瞬断化できます。詳細は 独立電源『パーソナルエナジー』 を参照ください。

費用対効果の考え方:「短停止1回の損失 × 年間想定回数」対「装置+工事費」。まず“止まると困る工程”から点で始め、後から面を拡げるのが投資効率に優れます。

オフグリッド(系統未連系/フローティングアース)の考え方

系統トラブルの影響を遮断しつつ、雷サージは“別作法”で守る

建物全体または一部を完全オフグリッド(系統未連系/フローティングアース)にすると、系統由来の瞬低・瞬停の影響を極めて受けにくくする構成が可能です。ただし直撃雷・誘導雷のサージは別問題。SPD(サージ保護デバイス)の適切な選定・等電位ボンディング・接地設計で保護する必要があります(JIS C 5381-11(SPD)三工社:SPD配線の実務昭電:雷サージ対策の基礎)。

試験規格・耐量カーブ(“どこまで耐えるか”の物差し)

機器のイミュニティ試験:IEC/JIS 61000-4-11・-34

相当たり16A以下の機器はIEC 61000-4-11、それ以上は-4-34が対象。電圧ディップ/短時間停電への試験方法とレベルが規定されています(ノイズ研究所の解説太陽波形の解説PDFJIS C 61000-4-34)。

受容領域の目安:ITIC(旧CBEMA)カーブ/SEMI F47

ITIC/CBEMAカーブは“電圧×時間”で装置が許容できる領域を可視化します。半導体装置ではSEMI F47が事実上の下限耐性として普及しており、業界全体でダウンタイム回避に寄与しています(SEMI公式Advanced Energyの要点まとめ)。

まとめ(最小の投資で最大の“止めない”を)

導入ステップとチェックリスト

  • ① 止まると困る工程・部屋を特定(PL・QC・受付・検査・制御盤)。
  • ② 必要負荷とバックアップ時間を算定(ログ・検査・搬送の安全停止時間)。
  • 100Vは「可搬型大容量UPS×CVCF」単相/三相200Vは「独立電源」を要所から段階導入。
  • ④ ログ監視・サグ記録の取得(UPSログ/電力品質計測)。
  • ⑤ オフグリッド化する範囲を検討(系統未連系+SPD/接地設計の同時実施)。

“一瞬”の事象を、もう事業リスクにしない。最初の一歩は、現場の要所を点で守ることから始めましょう。

参考資料

よくある質問(FAQ)

Q. 瞬停と瞬低の違いは?

A. 瞬停は電圧が一時的にゼロ、瞬低は電圧が一定時間下がる現象です(定義要旨)。

Q. どのくらいの頻度で起きますか?

A. 地域・年で差はありますが、サグは電力品質事象の中で最頻で、中央値は0.26秒程度との報告があります(Dranetz)。

Q. 100V系は何で守るのが良い?

A. 可搬型でもCVCFを備えたUPS一体型が有効です。パーソナルエナジー・ポータブルを参照ください。

Q. 200V(単相/三相)は?

A. ラインや部屋単位で独立電源を構成し、要所から段階導入するのが現実的です。パーソナルエナジーをご確認ください。

Q. オフグリッドにすれば落雷の影響は受けませんか?

A. 系統由来の瞬停・瞬低は避けられますが、直撃雷・誘導雷のサージ対策はSPDと接地設計が別途必要です(JIS C 5381-11)。

Q. 規格の“耐量”は何を見れば良い?

A. 一般機器はIEC 61000-4-11/-34、半導体装置はSEMI F47、設計の目安にITIC/CBEMAカーブが参考になります。

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